作成日:2024/03/01
湖東三山
滋賀県東部の「湖東三山」に出掛けてきました。今年も近場、遠方を問わず、できる
だけ国内各地を出歩きたいと考えており、2月下旬の寒さ募る平日、車にて北から南に
動きました。いずれも天台宗系の三山は紅葉の名所として知られていますが(つまり三
山は山ではなく、お寺)、ほとんど誰もいない冬の情景にも捨てがたいものがありまし
た。
まずは西明寺(さいみょうじ)。国道307号から東に入り、車を停めて本堂と三重塔
(ともに国宝)そばまで上がります。鎌倉期の建造で、古びていますが、貫禄十分の造
り。本堂に入ると、僧侶には見えない職員風の男性から声を掛けられ、「初めて来られ
た方への礼儀です」と境内の建造物、本堂内の薬師如来像、日光月光菩薩像などについ
て10分ほど説明を受けました。楽しくありがたくお聞きしました。
次いで、金剛輪寺(こんごうりんじ)。ここは駐車場から15分ほど参道を歩いて本堂
(国宝)、三重塔(重文)まで上がります。参道両脇にはおびただしく地蔵尊が並び(
1000体を超える由)、掃除が行き届いていて、和やかな気分になりました。本堂、三重
塔ともに西明寺と似ており、縁起によると、戦国末期に織田信長の焼き討ちに遭ったも
のの、本堂等は難を逃れたあたりも共通しているようです。
信長の焼き討ちで被災したのは、三山目の百済寺(ひゃくさいじ)。僧房300を数え
たという最盛期、信長が攻め立てた近江の佐々木六角氏に付いたため、堂宇のほぼ全部
が焼失する憂き目に遭いました(16世紀後半、尾張以西で激しく蹂躙を繰り返した織田
勢の苛烈な焼き討ち跡は実際、21世紀に入っても随所で出遭います)。しかし、いま本
坊や庭園は再建され、整備された庭園上の遠望台からは比叡山、三上山、琵琶湖、名神
高速、比良山などがよく見え、明るい雰囲気のお寺です。
西明寺から百済寺まで10数キロで、普段なら歩くところ。ただ、この日は午後から雨
か雪の予報で、車に頼りました。すると、ゆっくり参詣しても三山で4時間ほどで済み
、余裕があったので、行ったことのなかった、すぐそばの臨済宗・永源寺へ。
ここも紅葉シーズンは混雑で有名ですが、参詣客はもとより、お寺側の人の姿もなく
、禅寺らしい簡素で直線的で寒々とした境内を歩いていると、心細い気分にもなりまし
た(参道山側の雑木林には多数のサルが見え隠れし、飛びかかってくるのでは、との不
安も)。とはいえ、三山も含め、冬にも咲く不断桜や、紅色やピンクの寒梅がそこここ
にあり、早春の気配も窺えました。