桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2024/01/18
歴史の映画を4本



 映画4本をDVDでレンタルして、日々の合間にパソコンで観賞しました。当通信の
ブログを雑多な映画評で埋めるのは度々のことで芸がないので、今回は4本いずれも舶来の好
きな歴史モノにテーマを定めました。ご寛恕願います。

■スタンリー・キューブリック監督 『スパルタカス』

 共和制ローマ末期の紀元前1世紀、奴隷のスパルタカスが起こした大規模な反乱を描
いた米ハリウッド映画です。公開は1960年で、当時すでに大物俳優だったカーク・ダグ
ラス(2020年103歳で死去)が指揮し、主演したことで有名です(もっとも、キューブ
リックはカーク・ダグラスの指示どおりに動いたこの映画を生涯、自らの監督作品とは
認めなかったとのこと)。ともあれ、3時間を超える大作(復元版)は、ノートパソコ
ンにDVDドライブを繋ぎ、小さな画面で観るには勿体ないほどの派手な天然色映画で
した。

 マルクスが「古代プロレタリアートの真の代表者」と評したスパルタカスは、作中、
恋仲だった女奴隷(ジーン・シモンズ)がローマの高官に買われたことに激昂したこと
が反乱の端緒だったように描かれています。しかし、この辺りは史実とは異なるのでは
、との批判もある由。その前年に公開された大作『ベンハー』と同様、歴史を題材にし
ながらも創作・脚色部分の多い、米国らしい歴史スペクタクル映画のように思えました。

■リュック・ベッソン監督 『ジャンヌ・ダルク』

 英仏間の百年戦争のさなか、イングランド軍に侵攻されるフランス側の反撃を率いた
英雄ジャンヌ・ダルクの誕生から19歳で処刑される(1431年)までを描いた米仏合作の
歴史映画です(1999年公開)。主役を演じたのはミラ・ジョボビッチで、なかなかの熱
演で迫力があります。

 但し、神の声を聞いてフランス軍を前線で指揮したジャンヌ・ダルクは、フランスを
守るために奇跡を起こした聖人として名誉回復されたとはいえ、映画では「神の啓示」
は妄想、または自己過信のあげくであり、神の声は聞いてはいなかったのでは、という
冷酷な解釈になっています。このあたり、とくに感情移入できる歴史上の人物でもない
ので、解釈は解釈として興味深く思えます。

■ニコラス・レイ監督 『北京の55日』

 1963年公開の米ハリウッド映画。清朝末期の義和団事件(1900年)を欧米列強の側か
ら描いた歴史スペクタクルといえます。「扶清滅洋」を掲げる排外主義の義和団20万人
が北京に入城し、日欧米11カ国の居留民らが籠城を強いられ、55日後に解放された模様
を描いています。清朝の西太后が義和団を支持、あるいは積極的に征圧しようとしなか
ったため、8カ国連合軍と義和団が戦闘状態に入り、その模様が北京城の大掛かりなセ
ットによって再現されています。迫力はあります。

 しかし、歴史モノとはいえ、米国海兵隊少佐(チャールトン・ヘストン)のロマンス
などを絡めつつ、義和団や清朝は列強に対する無駄な抵抗を試みた、敗残間近の「眠れ
る獅子」とみなされたままのようにもみえます。正直そんなシンプルな事件解釈に立っ
ており、史劇というよりは大がかりな娯楽大作といった気配。伊丹十三演じる柴五郎は
なかなか映えていましたが。

■セルゲイ・エイゼンシュタイン監督 『アレクサンドル・ネフスキー』

 1938年、ソ連で公開された13世紀のロシアを舞台とする史劇映画。「神聖ローマ帝国
」(ドイツ)のチュートン騎士団がロシアに侵攻し、迎え撃ったノブゴロド公ネフスキ
ーが「氷上の決戦」等で騎士団を撃退した、という史実を活劇風に描いています。エイ
ゼンシュタインはソ連映画『戦艦ポチョムキン』(1928年)で知られ(私もむかし観て
その迫力に感心した覚えがあります)、こちらも後半の30分ほど続く戦闘シーンは80年
以上前の映像にしては鮮やかで、ダイナミックでした。

 制作・公開当時のソ連はスターリンの恐怖政治の渦中にあり、エイゼンシュタインも
起伏の多い生涯を過ごしたようです。ただ、この映画は公開数年後、独ソ不可侵条約(
1939年)を破ったナチスドイツのソ連侵攻(1941年)と二重写しになったらしく、スタ
ーリンからも賞賛されたとのことでした。
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