桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2023/09/02
映画を5本



 今回もつなぎ風にレンタルDVDの感想を5本。借りたのはタイプばらば
らですが、それなりに楽しく観賞できました。 ■エミール・クストリッツァ監督 『世界でいちばん貧しい大統領  愛と
闘争の男、ホセ・ムヒカ』  2010年3月〜2015年2月、南米ウルグアイの大統領を務めたホセ・ムヒ
カさん(88)の波乱万丈の半生を描いたドキュメンタリー映画です。旧ユー
ゴスラビア・サラエボ出身のクストリッツァ監督が聞き手となり、収入の7
〜9割を貧困層支援の財団に寄付し、自らは質素な生活を送っているという
姿をルポ風に記録しています。  元は極左武闘組織のリーダーとはいえ、大統領になってからは温厚で包容
力のある言動と雰囲気をまとい、首都モンテビデオ近郊の農園からノーネク
タイで通う姿は絵になっていました。ただ、映像は74分と短く「もうひと
掘りを」という気配もあります。「ウルグアイ史上最低の大統領」とか「パ
フォーマンスだけだ」とかの批判・攻撃の声も(演出上の技法として)交え
てあり、バランスは考慮されているようです。 ■ブレット・モーゲン監督 『デヴィッド・ボウイ  ムーンエイジ・デイド
リーム』  英国のロック歌手、デヴィッド・ボウイ(1947〜2016年)の生涯をアー
カイブから拾い上げた2時間強の長編ドキュメンタリー。2022年の公開。残
された膨大な映像記録をこま切れにつなぎ合わせ、資産などを管理する財団
が監修したらしく、派手な画面が続くものの、手堅い編集になっています。
全編に自作・自演の全40曲がかぶさり、私も割とこのアーティストのリリカ
ルな音楽は好きだったので、楽しめました。  面白いのは、このマルチタレントが絵を描くシーン。曲と同様、ユニーク
な抽象画を軽々と描き上げていくシーンが何度も出てきます。デヴィッド・
ボウイは一時京都に滞在していたとの情報が流れ、現に阪急電車に乗り込ん
でいたりして、当時一部で騒ぎになっていたことも思い出しました。 ■濱口竜介監督 『ドライブ・マイ・カー』  村上春樹さんの短編集『女のいない男たち』の数本を踏まえ、濱口監督ら
がほぼオリジナルな脚本に仕立てた作品で、カンヌ国際映画祭・脚本賞など
内外の多数の受賞を重ねたことでニュースにもなりました。  映画評サイトをみると、「分からなかった」とか「長過ぎる」とかの批判
的な感想も散見される半面、私は十分に面白く観賞できました。短いセリフ
のやりとり、淡々としながらもムダのない展開、さらに遠方からの映像のう
まさが相まって3時間弱の長尺ストーリーも退屈せずでした。ラストシーン
も冗談っぽくて面白い仕上がり。ニュースのとおり傑作といっていいように
思います。2021年8月の公開。 ■三野龍一監督 『近江商人、走る!』  コメディタッチの時代劇で、軽く楽しく観終えました。江戸中期、大津の
大店に奉公する商人・銀次が、堂島の米相場の情報を素早くキャッチする方
法を編み出すなど、才覚と行動力で大店の危機を打開する、というエンタメ
もの。2022年12月公開。  もっとも、七福神の福禄寿みたいに(大きなカツラで)頭の長い藤岡弘が
出てきたり、その藤岡弘は大津藩(関ヶ原の合戦後廃藩となり、一帯は膳所
藩が引き継いだのでこれはウソ)の藩主で、口にする「近江商人の三方よし」
の商人道徳と、銀次らの相場情報の入手は別モノとしか思えないなど、突っ
込みどころ多数。何より、関西弁と関東弁がごちゃまぜになっていて聞き苦
しく(銀次の小さいころ、つまり江州生まれのガキがこまっしゃくれた関東
弁など使うはずがない)、正直B級の気配も残っています。 ■塚本晋也監督 『野火』  大岡昇平原作の同名小説の戦後2回目の映画化(最初は市川崑監督)。太
平洋戦争末期、フィリピン・レイテ島で放浪する陸軍一等兵らの姿を虚実な
いまぜで描いています。市川崑の『野火』と異なるのは、塚本監督自らが敗
残兵・田村に扮し、人肉喰いに象徴される、極限状態の人間の行動を再現し
ようとしているところ。  しかし、米軍に撃たれる多数の敗残兵らの血しぶき、肉体の破壊、湧き出
る蛆虫、さらに「猿の肉」と称する人肉の描写や妄想の映像は、ホラーオカ
ルトのスプラッタ映画さながら。発狂の寸前まで追い込まれた人間群像のリ
アルな描出というより、グロテスクな特撮を露悪的に見せつける側面の方が
勝っているようにも思えます。
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