桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2023/05/03
映画を5本



 レンタルで観たDVDの感想を簡単に。映画評は頃合いのネタがない時に書いてい
ますが、今回は大型連休の狭間でもあり、肩の凝らない娯楽モノを中心に選びました。

■原田真人監督 『燃えよ剣』

 新選組の10年足らずの盛衰をテンポよくまとめています。司馬遼太郎原作で、土方歳
三は岡田准一、近藤勇は鈴木亮平。2時間と少しの間に多摩の道場時代から五稜郭の箱
館戦争まで詰め込み、エピソードごとにそれぞれソツなく映像化しています。

 岡田准一の土方歳三は、雰囲気はあります。ただ、新選組副長としての闊達さの半面
での「冷酷非情の凄み」は、世代的には「栗塚旭」が適役だったという印象が残ってい
ます。岡田准一は黒田官兵衛になり、石田三成になり、財前五郎にもなる。しかし、栗
塚旭は土方歳三だけ、という若い頃の記憶は簡単には消えないようです。映画では、途
中で暗殺される芹沢鴨(伊藤英明)、土佐勤皇派の用心棒岡田以蔵(村上虹郎)の演技
も悪くはなかったように思います。2021年10月公開。

■小泉堯史監督 『峠 最後のサムライ』

 こちらも原作は司馬遼太郎の長編歴史小説『峠』。戊辰戦争を迎えた越後長岡藩の家
老河井継之助を役所広司が演じる、どこか『燃えよ剣』と似た気配の一本です。小泉監
督は黒澤明の下で30年近く助手を務め、近年では葉室麟さん原作の『蜩(ひぐらし)ノ
記』の映画化などで活躍されているようです。

 『峠』も脚本的にはほぼ原作どおり。テンポが緩い場面や、セリフ回しが分かりにく
い箇所もあり、『燃えよ剣』ほどのメリハリがないようにも思います。2020年の公開。
河井継之助が藩の独立性にこだわらず西軍との衝突を避けていれば長岡城の陥落、会津
への撤退はなかったという意味で、今もこの「最後のサムライ」(?)に対する評価は
定まっていないように思われます。その辺りのモヤモヤは、映画でも払拭されずに終わ
りました。

■樋口昌嗣監督 『ローレライ』

 福井晴敏さんの長編小説『終戦のローレライ』が原作。太平洋戦争末期、架空の潜水
艦「伊507」を舞台に、広島、長崎に続いて東京を狙った3つ目の原爆搭載のB29を
テニアン島離陸直後に撃ち落とす、というSF戦記映画です。艦長はこちらも役所広司
。堤真一が、帝国海軍のよく分からない反逆の軍人として登場します。

 2005年3月の公開で、20年近く前としては的確な特撮場面が多数。とはいえ、人間の
生物的な能力を拡張した海中の敵探索システムとか、米国海軍との通牒活動とか、SF
とはいえ、いかにも作ったふうの無理があり、画面に没入できなかったのも確か。自衛
艦を舞台にした福井さんの長編『亡国のイージス』は力作、しかし映画はいま一つだっ
たのを思い出しました。

■ルーク・スパーク監督 『オキュペーション 侵略』

 2018年公開の豪州のSF映画です。豪州の片田舎のラグビー場。やがて対宇宙人の戦
士となる主人公らが試合中、巨大な宇宙船が飛来し、縄文土偶のような宇宙人の攻撃が
始まります。最初のうちは迫力も窺えましたが、人間と似た背丈の着ぐるみの宇宙人多
数とのドンパチが続き、特撮場面も減っていきます。

 映画評のサイトをみていても「突っ込みどころだらけ」とばかりに評価は高くはない
ようです。私は『スターウォーズ』ばりの宇宙空間でのスピーディーな空中戦というよ
り、宅地造成中の空き地あたりを舞台にした仮面ライダーとショッカーの白兵戦(?)
を思い出しました。

■岸善幸監督 『前科者』

 2022年1月公開。刑務所から出所した前科持ちの更生を助け、支えるのがボランティ
ア風の保護司。有村架純演じる、若い女性保護司と、更生の途上にありながら突然姿を
消した若い男(森田剛)を軸に、いくつものナゾが徐々に明らかになっていく、という
社会派ドラマです。

 もっとも、ナゾがナゾを呼ぶ、という展開はみえてくるとはいえ、ストーリーが込み
入り過ぎ、作られ過ぎの観があり、その分、進展につれてリアリティが弱まっていきま
す。つまらなくはないものの、作られ過ぎが次第に退屈に変じていく気がしました。
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