作成日:2022/12/17
回顧と映画5本
年内最後。例年12月中旬の通信では1年を振り返って、みたいなことを書いています が、今年は9月〜11月の「京都一周トレイル」(全長83.6キロ)踏破が、ささやかなが らも個人的には最大のイベントでした。 腹ペコでラーメン屋に入ってラーメンを注文した後、ラーメンが届くまで頭はラーメ ンのことばかり考えているように、一周トレイルを辿っていた3カ月間は寝ても覚めて も、明けても暮れても一周トレイル。という案配で、うまく年間の回顧はできそうもな いので、例によってDVDレンタルで合間に観た映画5本の短評を並べて来年につなげ ます(何をどうつなげる?)。 ■ゲオルギ・ダネリア監督 『クー!キン・ザ・ザ』 2013年、ロシアとジョージア(昔ならグルジア)合作の長編アニメーション。レンタ ル店の棚で見つけ、ひょいと借りて観たら、なかなかに面白いユニークなSFタッチの アニメでした。チェロ奏者の中年男と風来坊風の青年がモスクワの街角から地球外惑星 にワープ。そこでの時空のねじれと不条理劇風のできごとを次々に軽く明るくシュール に描いていきます。 ネットで探ると、旧ソ連時代を風刺した昔の実写映画をアニメ化したとのこと。何を どう風刺したのか分からないままでしたが、深読みするまでもなく、変わった場面の連 続で引き込まれます。こんなアニメがあったのか、と感心しました。 ■山田洋二監督 『シネマの神様』 新型コロナ肺炎で急死した志村けんに代わって沢田研二が主役を務めた2021年8月公 開の松竹100周年記念映画。ストーリー自体は、若いころ映画監督を目指しながら夢が ついえたダメ男の再生と死、といったところで、山田監督らの脚本はともかく、沢田研 二や小林稔侍や宮本信子の演技にはそこそこ感じ入りました。 原作は作家・原田宗典さんの妹、原田マハさんが、ギャンブル好きで借財も多かった 父親をモデルにしたらしい同名の小説。原作と映画はかなり違っているということです が、いずれであれ、映画での「シネマの神様」は当方には何のことかよく分からないま までした。 ■宇治茶監督 『燃える仏像人間』 2013年公開のマイナーな劇画アニメーション。監督・脚本・作画・撮影をほぼ1人で 手掛けた宇治茶、こと宇治市出身の男性アニメ作家(30代後半)による、怪奇幻想のホ ラーものです。 お寺の仏像と人間が融合・合体するという、オカルト風のグロテスクなアイデアから 始まり、毒々しい切り絵をつなげてコマ割り撮影したような奇妙な画面が続きます。『 クー!キン・ザ・ザ』とは別の意味で呆気にとられました。
この宇治茶なるアニメ作家は、2019年に『バイオレンス・ボイジャー』という劇画
アニメーションも引き続いて監督・編集し、国内外で多数の受賞に輝いたとか。山奥の
娯楽施設に入り込んだ子どもが底なしの恐怖を体験する、というホラーものらしく、予
告編を観てもそのグロさが窺えます。 ■大木萌監督 『漫画誕生』 イッセー尾形が戦前の、というより日本初の職業漫画家、北沢楽天に扮した一代記風 の娯楽作。2019年11月公開。戦争末期、すでに一線から退いていた楽天が翼賛系の「日 本漫画奉公会」の会長に就任し、内務省の検閲官に呼ばれて半生を振り返る、といった ストーリー。 但し、展開にあまりメリハリがなく、引き込まれるほどの迫力はないまま。私は一時
期、イッセー尾形の一人芝居のステージ録画ビデオ多数を繰り返し観て笑っていたこと
があり、あの頃の破天荒な「人間模写」の面白さが映画からはあまり感じられなかった
ようにも思えてきます。 ■鈴木雅之監督 『マスカレード・ナイト』 原作は東野圭吾さんの同名の推理小説。木村拓哉と長澤まさみが共演して2019年1月 に公開された『マスカレード・ホテル』のシリーズ2作目で、舞台も捜査側の顔ぶれ等 もほぼ前作と同じ。 しかし率直に申し上げて、話が込み入り過ぎ、シナリオが端折り過ぎ、トリック・ア イデアに無理があり過ぎで、ミステリー映画としては今ひとつ。当方、出演する配役陣 にさほどの興味もなく、前作と同様、それほどには感心しなかった次第です。2021年9 月の公開。