作成日:2022/08/17
映画8本
夏休み、レンタルDVDで観た和洋の映画8本。「目も当てられない失敗作」などと 悪評芬々の邦画『大怪獣のあとしまつ』を楽しんだほか、いつも通りの勝手気ままな短 文を。 ■三木聡監督 『大怪獣のあとしまつ』 2022年2月公開。「ナゾの光」を浴びて関東・利根川下流域で頓死した大怪獣。動物 保護法の対象か、一般廃棄物か生ゴミか。官邸や国防省等でのぎくしゃくしたやりとり 、お寒いおやじギャグの連発、お笑いのような結末、といった具合で、評価が低いまま の松竹・東映合同の特撮映画です。私は悪評群をチェックしたうえで観たので、意外や 、楽しく面白い時間を過ごせました。往年の怪獣映画のパロディ化、コメディ化、いや 死んだ怪獣を「希望」と名付けたり、途中から予想できる最終的な「あとしまつ」に至 っては全編冗談、という構図がみえてきて、生真面目に駄作・凡作などと批判するのは 野暮な気もしてきました。 ■ドロール・ザハビ監督 『クレッシェンド 〜 音楽の架け橋』 2019年公開のドイツ映画。アラブ人とユダヤ人合同の楽団が作れないか、という中東 和平交渉を彩る企画に、ドイツの指揮者が賛同し、パレスチナ、イスラエル双方から応 募した数十人がイタリアで合宿します。実際にとある大指揮者が提唱し、実現させたと いう楽団をモデルにしたとのこと。ただ、邦題からは企画は成功したように見えるもの の、シナリオはそうはなっていないのが辛いところです。 ■クレイ・ホール監督 『プレーンズ』 2013年12月公開の米国ディズニーアニメ映画。『カーズ』『カーズ2』の姉妹作品と いうことで、こちらは小型飛行機ばかりが出てきます。米国農村部の農薬散布機が主人 公で、その彼が各国の飛行機が参加する世界一周レースで優勝するまでを描きます。も っとも『カーズ』の二番煎じ感は否めず、展開も予想どおり。「サクラ」という日本の 女性飛行機が出てきますが、これは日本公開用のバージョンで、デジタル映像というの はそんな編集が容易ということのようです。 ■山田洋二監督 『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3』 2018年5月公開。夫(西村雅彦)の無神経なひと言に反発した妻(夏川結衣)が家出 し、反省した夫が謝罪して妻を呼び戻す、という分かりやすい筋立て。しかし、高齢の せいとは思いたくないものの、山田監督の演出やカメラワークが割と大味で、細部まで 計算されていた往年の水準には至っていないようにも思えてきます。謝罪した夫とそれ を受け入れた妻という結末ながら、画面からは2人が仲直りしたように見えないのは、 脚本のせいでしょうか? ■君塚良一監督 『グッドモーニングショー』 2016年10月公開。ニュースキャスター中井貴一の演技が楽しめる佳作。テレビ局(フ ジテレビ?)内のゴタゴタに巻き込まれたキャスターが、起こったばかりの喫茶店での 人質立てこもり事件の犯人(濱田岳)から名指しで呼び出され、現地に入って中継を敢 行します。そこでの犯人とのやり取りを軸に、テレビ局内の報道部とワイドショーの対 立を絡めてテンポよく。面白く観ることができました。 ■朝原雄三監督 『武士の献立』 2013年公開。加賀前田藩の実在の「包丁侍」(御料理人)舟木家をモデルにした、軽 めの時代劇。家系を継ぐ若侍(高良健吾)とその妻(上戸彩)を中心に、舟木家が重要 な藩の饗応料理を成功させるまでを描いています。加賀藩のお家騒動を絡めてはいるも のの、必ずしもうまくかみ合っていない気配。高良健吾とかいう若手俳優にまるで表情 がないのにも、演出上の不徹底を感じました。 ■ルイーズ・アルシャンポー監督 『やすらぎの森』 2021年5月公開のカナダ映画。フランス語圏ケベック州にある小さな湖のほとりに住 む世捨て人風のじいさんが3人。そこに60年以上も施設に収容されていたという老女80 歳がやってきます。並行して、近隣で発生した山火事の接近がうわさされ、静かな中に も不穏な空気が高まっていきます。森の中の隠遁生活みたいな気配が徐々にはげ落ちる 、フランス映画系統の、一筋縄ではいかない多面的な構成になっています。難しげとい えば難しげ。 ■森ガキ侑大監督 『人と仕事』 2021年10月公開。有村架純という女優と志尊淳という男優が福祉施設、風俗、空き缶 集めのホームレスなど、さまざまな現場で働く人々へのインタビューを試みたドキュメ ンタリータッチの映画。コロナ禍によって仕事が減る、なくなる、変質する、などのタ イムリーな狙いが窺えるものの、正直インタビューが平板で、印象に残るやり取りは少 なく、残念ながら、大したことはなかった、ということになります。