猛暑が続くので妄言も多くなる？　私ではなく、アカの他人の話。３つほど見つけた
ので、取り上げます。

　１、「低賃金を解消するには、中小企業を減らす必要がある」

　経済同友会の櫻田謙吾代表幹事が先月、民放テレビのインタビューで言い放ちました
。「廃業すれば税制上のメリットがあるとか、大企業の傘下に入りやすくするとかすれ
ばいい」とも言ったようです。町工場や自宅兼店舗・事務所だけの流通・サービス業は
数ばかり多く、生産性が低いので、意図的に減らせばいい、という思考法です。

　事業所数で99％、従事者数で68％を占める中小企業を淘汰していけば、平均賃金も
上がる、という主張。珍しくもなく、同時に、いたって非現実的な「机上の空論」です。
経済の裾野を形成している中小企業の数、雇用する労働者数を減らせばいい、と言える
のは、大手損保で純粋培養されたエリートだから？

　経営体力の弱い中小企業が保護され、経済の足かせになっている一面はあります。補
助金・税制等の優遇措置も多い。しかし一方で、意欲ある経営者の自助努力とともに、
中小企業の競争力を高める政策も進められています。経産省（通産省）の産業政策の全
部を是認する気はないものの、単に「中小企業の数を減らせばいい」と言うのは、現場
を知らない、現場が見えていない無神経な妄言では、と考えます。

　２、「日本が必要とするエネルギーは太陽光で全部賄える」

　キャスターの辛坊治郎さんがツイッターで語り、ネット上で反論多数が流れました。
太陽光で全部賄えるというのは、自宅の屋根に発電パネルを設置し、固定買い取り制
度で余った電力も売電できている、という体験に基づくもののようです。

　2020年度の国内の電源構成は火力76％、水力８％、太陽光７％、風力２％など
（原子力は稼働中断が多く４％）。全部を太陽光で賄うには、よく言われるように列
島の３〜５％をパネルで覆う必要があります。この種の空想論が出てくるのは、コス
ト感覚があいまいで、恒常的な産業用大口電力需要等が軽視されているからでは？
水力や地熱等の再生可能エネルギーを合算するとしても、化石燃料や原子力を限りな
くゼロに近づけようとするのは、率直なところリアリティに欠けます。

　ヘソ曲がりの私は、化石燃料の使用を減らすべし、という地球温暖化仮説に対する
懐疑論から、まだ抜け出せていません。なので、再生可能エネルギーに偏重させた電
源構成の転換を積極的に支持するつもりもない（省エネは大事です）。

　もう慣れましたが、懐疑論を口にすると表立ってヒトに嫌われることも多い。むか
し環境原理主義者から「変態記者」と罵倒されたこともあります。しかも、この暑さ。
なのに、人間がもたらした気候変動に伴う「異常気象」の多発という、一見もっとも
らしい、中身のない便利な流行語を使う気はありません。

　理由はいくつもありますが、一つは、気候変動の大小や比較を論じるには最低300
年のスパンをベースにすべきなのに、それができるデータがほとんどないことです。
「産業革命以前、地球の気候は安定していた」という温暖化論者の根拠のない、後知
恵風の推定とは裏腹に、有史以前から地球は、主に太陽活動の変化による、大規模な
天変地異にずっと見舞われ続けている、と考える方が自然だと考えています。

　３、「ウクライナ東部の市民に強制避難を指示した。ロシア軍に殺される前に」

　ウクライナの大統領が東部２州の市民にこう呼び掛けた、というＣＮＮの報道があり
ました。ロシアが侵攻の目的として一貫して掲げているのは、東部２州の「住民の保護
のため」。2014年の政権転換以降、アゾフ大隊等のウクライナ民兵団が東部で８年間に
２万人近いロシア系住民を間断なく殺害してきたことが背景にあるようです。

　ロシアの侵攻の前、アゾフ大隊は日本の外務省でもネオナチのテロ集団（約５万人。
多くは傭兵）に指定していたのに、今年２月以降はウ軍を支える「精鋭部隊」になりま
した。私は数年前から小さなニュース解説を通じて、東部で頻発する民兵団のテロにつ
いて仄聞していましたから、すごい変わりようです。米英とウクライナが西側メディア
に向けてそう言い換え、メディアがそのまま流しているからです。大統領は「強制避難
を指示した。我らの民兵団が殺す前に」と言った方が正確だったのではないか。

　詐欺師が警察に捕まったとき、そいつを知る周囲が「誠実で良心的で、人をだます人
には見えなかった」と驚くことがあります。当たり前です。いかにも詐欺師に見える奴
はおおむね詐欺に失敗します。そいつが詐欺師だとは思えないから、詐欺の被害に遭う
のです。似たような意味で、私は、元コメディアン（俳優）の大統領は、ベトナムで40
0万人以上、イラクで50万人以上を殺した米国言いなりのペテン師ではないか、と勝手
に疑っています。