桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2022/05/17
賞与



 賞与(ボーナス)の支給は給与とは違い、事業主の義務ではありません。
時給、月給などの計算法で給与は通常、会社が月ごとに必ず支払う一方、
賞与は社内規定がなければ出さなくても法的には問題なく、支払いの是非
は経営者側の裁量になっています。  戦後日本の賞与は、収益の急増等に比例した欧米風の臨時の一時金的な
扱いというより、今も残る年功序列に並行して賃金構成に組み込まれたス
タイルになっています。大企業では就業規則に賞与支給を定めるのが普通
で、リクルート対策でも不可欠。とともに、月給の2−3カ月分などの暗
黙の目安があるとはいえ、会社の業況を反映して夏冬で5カ月分ずつとい
う派手なケースもあれば、規定はあっても経営が厳しく賞与は減額または
ゼロ、ということもあります。  とはいえ、私らのような開業社労士が主にお手伝いしている中小・零細
企業では社内規定で「賞与なし」という例は珍しくありません。賞与が出
せるほどの経営体力が備わっていない、時期尚早、と経営者自らが判断し
ていることが多いためです。  前置きが長くなりました。根強い人気のキャリアアップ(CU)助成金
の今年度バージョンで賞与について新たな要件が前面に出てきました。  まず、CU助成金のメインともいえる「正社員化コース」では、正社員
の定義に「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者、
という限定が加わります(10月1日から)。例えば、就業規則に「賞与は
支給しない」とか「業績によって支給することがある」という記載が残っ
ているとアウトで、助成の対象外。申請するなら、正社員転換等の前に就
業規則を改定する必要があります。  また、再編された「賞与・退職金制度導入コース」では、パート・アル
バイトなどの有期契約労働者に、正社員と同じ趣旨の賞与を支給する旨規
定すれば可、という要件が示されています(非正規への賞与は半年分で5
万円以上、など。助成額は38万円)。  昇給や退職金制度と併せ、賞与を就業規則(会社のルールブック)に規
定するように、という圧力が強まっているともいえます。その分、申請の
ハードルが高くなっていきそうな雲行きです。  CU助成金は、パート・アルバイトや若い契約社員らを育ててキャリア
を引っ張り上げる企業を支援する、という狙いを掲げ、中小企業振興とい
う意味合いも含め、割と筋のいい、趣旨に賛同しやすい助成金です。私も
今年度はざっと数えて20人以上を対象に支給申請する予定ですが、中小・
零細企業の多くは経営基盤が脆弱で、賞与や退職金を支給するという水準
にまで自らを引き上げるには意識的な努力が求められます。シビアな時代
に入りそうです。
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