桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2022/03/19
したり顔



 再びロシアによるウクライナ侵攻について。特に今回の侵攻をマス
コミ等がどう扱っているか、事態は的確に公正に伝えられているか、
などで考えたことを3つほど。  まず目に付くのが「プーチンは狂人」「20年前に比べると、顔や声
まで変わった」という印象論が目立つこと。ある日本人評論家はテレ
ビで「プーチンはおかしいですね。彼の目を見れば分かります」とし
たり顔でコメントしていました。動画や画像を見てアンタにだけ異状
が分かるはずがない。この評論家は「顔相占い」が趣味か?  情報もないのに、思いつきを口にするから、こんな軽々しい印象
論が横行します。佐藤優さんらロシアの専門家は「プーチンは昔とそ
んなに変わっていない」と観察しており、私も多分そうだろうと思い
ます。今回のウクライナ侵攻では戦術面でのミス・誤算が多いのでは、
と思うものの、プーチンがいつ核のボタンを押すか分からないパラノ
イアだとは考えにくいように思います。  もう一つは、ロシア軍による「無差別攻撃」。1991年の独立以降、
ウクライナでは親欧米派と親露派が交互に政権をとる不安定な情勢が
続き、米国を軸にした欧米側も内政に過度に介入しています。そこで
生まれたのが強力な準軍隊・民兵団のアゾフなど。今回のロシアによ
る侵攻のきっかけの一つが、ウクライナ東部の親露地域におけるネオ
ナチ・アゾフの暴虐があった、という解説はたびたび聞いています。

 アゾフは街中に紛れ込み、非武装の市民を盾に、西側からの武器供
与を受けてゲリラ風に迎撃するため、ロシア軍はウクライナ政府軍以
上に、アゾフを排除すべき敵とみなしているといいます。ところが、
アゾフがどこに潜んでいるのか分かりにくい。だから、ロシア軍は一
定エリアに集中的な砲撃を加えているケースが多い、という観測があ
る。絨毯爆撃風の無差別攻撃ではないように思えるのです。  ところが、メディアはアゾフのことは前面には出さず、単にロシア
軍による無差別攻撃と繰り返すだけ。アゾフのことはメディア側も知
っているはずで、「正義はウクライナ側にあり」「ウクライナは一方
的な被害者」という判断で意図的に伏せているのなら欺瞞といえなく
もない。ロシアは無抵抗なウクライナの市民をもっぱらの標的にして
相手構わず、所構わず攻撃している、というのなら完全なジェノサイ
ドです。しかし、そこまでには至っていないのではないか。  最後は数字。ウクライナから西側に逃げる難民は300万人に達した、
という国連の発表がありました。しかし、国連は各国政府や団体から
の報告を足し算しているだけ。当初ウクライナの民間人の死者数の発
表で複数の当事者間に10倍以上の差があったように、300万人という
数字は極端な水増しだという指摘が出ています。  話を変えます。ネットニュース(リポート)で目にとまったのに、
こんなのがあります。岐阜県の下呂温泉を最近知ったという関東在住
の若手リポーターが「ゲロ温泉というのを見つけたよ。キッタナイね
え。入る人なんているのかな?」としたり顔であざ笑うようなタッチ
でした。平安時代から使われ、室町以降、日本三名湯の一つに挙がる
下呂温泉を、この世間知らずの田舎者は、幼稚園児の寝言のような思
いつきでバカにしたわけです。  ロシアによるウクライナ侵攻は戦略として妥当とはいえず、プーチ
ンは強引な戦術で逆に痛手を負うことになるのでは、と私も予測しま
す。しかし、視聴者に迎合する思いつきや誇張、ミスリードと、的確
で公正なニュースを識別することは不可欠です。対立する側が相手の
発信を「フェイク」「誇張」「誤報」などと罵り合うのが普通になり
ましたから、仕分けるのも骨が折れますが、一方に引きずられること
のないように、と個人的には自戒しています。下呂温泉をゲロの温泉
とみなすような、幼稚で滑稽で無神経な見立ては回避したいものです。
お問い合わせ
■高田社会保険労務士事務所/■〒612‐8083 京都市伏見区京町6‐51‐1 ハイツ美好103/■TEL&FAX 075-748-6068/携帯電話090‐9881‐5702

メールでのお問合せ