桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2021/01/06
年末年始に映画6本



 コロナごもりというのか、年末年始は外出も控え、6本のレンタルDVDと本2冊でしのぎました。

■原田真人監督 『検察側の罪人』(2018年8月公開)
 
 雫井脩介さん原作の同名のサスペンス小説を映画化。木村拓哉と二宮和也(私でもこの2人ぐらいは知っています)が先輩後輩の検察官役に入り込んで熱演しています。とくに、二宮和也の「感情的になった若手検察官」の演技は十分にうまかった(それでもまるで検事らしく見えないのは残念です)。

 原作は未読なのでワキに置くとして、難点は、ドラマ後半のある検察官のあの行動は無理があり過ぎること。ネタばらしになるので控えますが、要は動機の説明がうまくいっていないということで、「いくらなんでも」という不自然さを残して事態が進んでいきます。

■マルコ・クロイツパイントナー監督 『コリー二事件』(2020年6月日本公開)

 ドイツで制作・放映され、話題になったという社会派法廷サスペンス。DVDに入っていた日本での予告編に一瞬、ナチスの標章(ハーケンクロイツ)が映し出されますので、ナチス絡みの戦争犯罪(関連)映画だと言っても、ネタばらしにはならないように思います。

 戦後のドイツで長く暮らしたイタリア人のコリー二は、社会的に成功したドイツ人実業家を白昼、オフィスにて殺害します。しかし、自首したコリー二は取り調べや法廷で何も語らず、国選弁護を務めるトルコ出身の弁護士は悪戦苦闘します。やがて明らかになる戦時中のその実業家の行動、コリー二の犯行の動機――。コリー二に扮するのはマカロニ・ウエスタンで一世を風靡したフランコ・ネロで、さすがに存在感のある演技でした。

■星護監督 『笑の大学』(2004年10月公開)

 切れのいいコメディーを多数制作している三谷幸喜さん原作。主に 舞台で上演され、人気になったという、戦前の喜劇作家と警視庁の検閲官の「攻防」劇を映画化した、ということのようです。

 浅草で活躍する喜劇作家に稲垣吾郎(私はこの人も知っています)、検閲官は役所広司。他にも脇役はいるものの、基本的には取調室での喜劇作家と検閲官のやりとりが中心で、作家が持ち込む喜劇の台本に検閲官が警告を繰り返し、作家は台本を持ち帰り、いつしか2人で面白い台本を練り上げていこうとする、という展開。楽しく観ることができました。稲垣吾郎は大根のように思えますが、雰囲気はありました。

■ジル・パケ=ブレネール監督 『アガサ・クリスティー ねじれた家』(2019年4月公開)

 こちらはイギリス映画。アガサ・クリスティーが1949年に発表した長編推理小説を素材に、ギリシャ出身の英国の富豪の遺産相続をめぐる、遺族9人の複雑な人間関係を描いていきます。アガサ・クリスティーは昔、かなりの冊数をこなしましたが、この「ねじれた家」は未読。期待しました。

 登場人物はこの手のミステリーでは定番の全員ワケあり風で、それぞれの秘密や野心、愛憎が交錯してややこしくなっています。真犯人は「最も犯人らしくない」人物という、よくあるパターンとはいえ、思うに、この展開はエラリー・クイーンの「Yの悲劇」に似ているといえば似ています。

■鈴木卓爾監督 『嵐電』(2019年5月公開)

 京都の四条大宮と嵐山を結ぶ1―2両編成の路面電車「嵐山電鉄」(京福電車)をメインに据えた不思議な映画です。現地ロケだけで映像化した現実に、ときどきソフトな幻想が紛れ込み、若い男女3組の心理と動きがゆらゆらと描かれていきます。ストーリーはあるような、ないような。

 昔なら「ワケが分からない。前衛気取りの凡作ではないか」とかなんとか、反発したかもしれません。しかし、全編に窺える静けさ、太秦かいわいの落ち着いた気配が感じられ、普通に楽しむことができました。

■若松節郎監督 『Fukushima 50』(2020年3月公開)

 地震・大津波以後の東京電力福島第一原発の現場作業員らの動きを描いたノンフィクションタッチの邦画です。水蒸気爆発を起こし、周辺住民の長期一斉避難を強いられるなど、危機的状況にあった第一原発に最後まで残った東電の50人を「豪華キャスト」が演じた、ということで興味深く観ました。ただ、公開後の評価は至って低かった、ということでした。

 原作は、私も読んでいた門田隆将さんのノンフィクション『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』。映画の評価が低かったのは、脚本の基調にあったのが「自然を甘くみていたから大災害になった」というだけの、自然災害めいたくくりで原発事故を扱っているからではないか、とも思われます。

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