桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2020/11/03
映画4本



 少し時間ができたので、またレンタルで観た映画を4本。手抜きのブログです。ご容赦ください。

■中野量太監督 『長いお別れ』(2019年5月公開)

 謹厳実直で本好きの元中学校校長(山崎努さん)が70歳でアルツハイマー認知症を患い、77歳で死ぬまでの7年間を描いた家族愛の映画。ボケ始めた夫を支える老妻に松原智恵子さん、長女は先日自殺したと伝わる竹内結子さん、二女に蒼井優さん。 

 物語は元校長の認知症の進行が淡々と示され、大きなドラマもなく、その最期の様子も見せずに終わります。むしろ支える家族3人の様子が詳しく描かれ、とくに竹内さんの演技が表情豊かで目を引きました。山崎さんはいま83歳ですから、撮影時は80歳。有吉佐和子さん原作の映画『恍惚の人』でボケ老人を演じたのは故森繁久彌さんで、それなりの雰囲気がありましたが、山崎さんの認知症の演技も個性的で、こちらも味がありました。


■チェリン・グラック監督 『杉原千畝 スギハラチウネ』(2015年12月公開)

 1940年、東欧リトアニアに赴任した外務省のノンキャリア、杉原千畝領事はナチスの迫害から逃れようとするユダヤ系の住民2300人(一説には6000人)に日本への通過査証を独断で発行し、彼らを救おうとします。その史実を再現したドキュメンタリータッチの映画です。

 監督は和歌山生まれの米国人で、日米合作の映画等に関わっているチェリン・グラックさん。杉原領事を演じるのは唐沢寿明さん。杉原さんは戦後、必ずしも報われたわけでもなく、当時の訓令を無視して査証を大量発行した行動を評価しなかった外務省が杉原領事の「名誉回復」を発表したのは2000年だったということです。いつごろから杉原領事の事績が知られ始めたのかよく覚えていませんが、感動的なドキュメントであることは確かです。


■レジス・ロワンサル監督 『9人の翻訳者 囚われたベストセラー』(2020年1月公開)

 フランス・ベルギー合作のミステリー映画。ベストセラー作家の新作の翻訳版各国一斉発売を進めるため、出版社が翻訳家9人をフランス某所の洋館地下に集め、外部との通信が遮断されるなか、1日20ページずつ作家の原稿が渡され、それを各国語に翻訳するという軟禁生活を強いられます。

 ところが、9人にだけ渡されている原稿がネットを通じて漏れ出てしまう。さらに複数の翻訳家の自殺や殺人も発生し、大きなどんでん返しの果てにエンディング。テンポ良く、仕掛けも面白くできているものの、いかにも「作った感」が強く、しかも「真犯人」の人相風体が気味悪く、後味はあまり良くありません。ダン・ブラウンの新作の版元が、実際に翻訳家を集めて各国語に訳させ、世界同時発売に持ち込んだ、というエピソードを下地にしてはいるようですが。


■今井正監督 『小林多喜二』(1974年製作、2018年7月復刻DVD発売)

 録画ビデオにも入っていない昔の映画のオリジナルネガをコンピュータ処理でDVD化したニューマスター版。映画館では上映されず、DVDを購入するかレンタルするかでしか観賞できないという限定版ということのようです。

 治安維持法が施行された8年後の1933年2月、プロレタリア文学の作家として次々に作品を発表し、共産党員として地下活動にも奔走していた小林多喜二(山本圭)はやがて尾行の果てに捕らわれ、東京築地署での拷問で殺されます。29歳で終わったその生涯を実録風に描いた左派系の映画です。

 画像処理しているので画面は鮮明、昔の邦画によくある、えらく早口な会話もきちんと再現されています。とはいえ、私は小林多喜二にも、戦前の共産主義活動にもシンパシーは持っていないので、それ以上の感想はありません。

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