桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2020/08/18
また映画5本



 懲りもせず、和洋の映画5本をレンタルで。市場での多数を占める青春モノ(!)やラブロマンス系(!!)は退屈なので避けていますし、逆に、クセのある実録モノ、ノンフィクション系にやたらと手を出しているようです。好みと性分なのでやむをえません。

■山田洋次監督 『男はつらいよ お帰り寅さん』
 
 シリーズが始まって50周年ということで、渥美清さん主演のオーソドックスな連作『男はつらいよ』等に残っているむかしの映像と、新しい映像をコラージュ方式でまとめた回顧もの風の新作です。2019年12月の公開。

 後藤久美子という、むかし「国民的美少女」と呼ばれた40代後半の女優が23年ぶりに映画に復帰したなどの話題があったようですが、私はゴクミには元々興味がないですし、そのセリフ回しはいささか下手くそ。寅さんの甥っ子満男役の吉岡秀隆は前からあんな風に場面ごとにいちいち目を剥いていただろうか、とか変なところが気になりました。といった次第で、正直さほどの感銘は受けないまま。

  
■ニルス・タベルニエ監督 『シュバルの理想宮 ある郵便配達員の夢』
 
 2019年12月公開のフランス映画。フランス南部の農村で1836年に生まれ、88歳で死ぬまでほとんど生地を動かなかった郵便配達夫、ジョゼフ・シュバルの実話に基づく、静かな半生の再現です。

 シュバルは、郵便配達の途中に拾った不思議な形の石を持ち帰り、自宅の庭先にそれらを並べ、やがて家族のために「石造りの宮殿」を独力で創り上げていく夢に囚われていきます。仕事の合間、こつこつと33年間かけたこの「シュバルの理想宮」はついに完成。家族以外からは変人扱いされたシュバルが残した理想宮は、ピカソが瞠目し、文化相マルローが顕彰して国の重要建築物に指定するなど、世に知られていきます。

 撮影は、現存する「シュバルの理想宮」の現地で行われたとのこと。製作上の予算はあまり要しなかったようにも思える小ぶりな出来栄えですが、南仏の伸びやかな風景をバックにした、味のあるいい映画でした。


■クラウディオ・ポリ監督 『ヒトラーVSピカソ 奪われた名画のゆくえ』

 2019年4月公開の伊仏独合作映画。1933年以降、ナチスドイツが強奪した絵画や彫刻は約60万点にのぼり、うち10万点が今も所在不明という事実関係につき、ヒトラーとゲーリング、およびユダヤ人を中心にした絵画所有者、画商らの記録、証言、映像をつなぎ合わせたドキュメンタリーです。

 とはいうものの、タイトルにある「ヒトラーとピカソの対決」めいた箇所はおしまい近くで「ゲルニカ」に対するピカソのコメントが字幕で出てくるだけ。良質のドキュメンタリーには避けられない記録や証言の「アラ削りのナマの部分」が編集でそぎ落とされたように思える半面、妙な演出めいた場面でそこをカバーし、雰囲気を出そうとする作為が目立って、フィクションかノンフィクションかどっちつかずな印象が残りました。


■若松節朗監督 『空母いぶき』

 漫画家かわぐちかいじさんのミリタリーサスペンスを元にした近未来軍事特撮映画といったところでしょうか。公開は2019年5月。原作は尖閣諸島領有を巡る中国との軍事衝突を予感した作品なのに、映画化では国籍不明(フィリピン北部あたりの架空の小国)の漁船が戦端を開くという設定。むしろ、総理大臣を演じる佐藤浩市のコメントがネット上でなぜか物議をかもすなど、何かと場外で騒がしかった作品だとのこと。

 私は一連の騒ぎは知らず、CGが邦画らしく依然としてややチャチなことは脇に置いて、エンタメとしてはそこそこ楽しめました。海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」を、航空機搭載型の架空の「いぶき」に変えたという設定らしく、自衛隊の能力を誇示しようとする狙いも窺えるように思われました。


■ヴァンサン・ペレーズ監督 『ヒトラーへの285枚の葉書』
 
 ナチスに抵抗した実在の夫婦の生涯を映画化。米英仏合作で、日本公開2017年7月。1940年、ナチスを信奉していたベルリンの中年夫婦がひとり息子の戦死を知り、父親は「ヒトラーは市民の敵」「ナチスは自由を阻害する」のような言葉を連ねたカードを書き続け、街なかに多数放置するという、密やかなレジスタンスを始めます。重苦しい相互監視と恐怖の支配のなか、2人はやがてゲシュタポに逮捕され、斬首されます。

 実在した夫婦の半生を再現という、ノンフィクション系作品としては『ヒトラーVSピカソ』よりはマシながら、突っ込みどころはいくつも。特に、ナチスの親衛隊員らが英語で「レッツゴー」とか「サンキューべリマッチ」とか言っているのが聞こえるのは、字幕のない場面であっても「どうもなあ」と思わせられます。中国・広西の映画製作所で、戦前の東京を舞台にした帝国陸軍の内紛を中国人が中国語で演じているようなものです(映画はベルリンほかの現地ロケのようです)。原作は東西統一前の1970年代に西ドイツでドラマ化されたと言いますから、ドイツがサボっているわけではない、とは思いますが。

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