作成日:2020/01/17
「終わった人」
内館牧子さんの長編小説『終わった人』を読み終え、面白かったので、中田秀夫監督が原作に惹かれて企画したという同じタイトルの邦画もレンタルで観ました。
映画は原作をほぼ忠実になぞっています。主人公の田代壮介(映画では舘ひろし)は東大法学部卒で大手銀行に就職し、自他ともに役員候補と目されるも、競争に敗れて小さな企業に出向、そこの専務で定年を迎えます。ときに63歳。
物語は、サラリーマンを卒業し、定年式を「生前葬」と嘆き、毎日が大型連休になった田代の様子、とくに妻千草(黒木瞳)との関わりの変化を描きます。舘ひろしは、この役どころでモントリオール世界映画祭の最優秀男優賞を取った由。確かに、刑事役が多かったこの俳優が自然体で「定年後」を好演しているように思えます。
具体的なストーリーの紹介は控えます。田代壮介の定年退職後の右往左往ぶり、「夢なし趣味なし」の惰性の生活から、誘いがあれば「仕事に戻る」といった辺りは、同年代の話として私らに似ているような、まるで似ていないような。もっとも、主人公らの言動やら発想、初老を迎えた感慨やらは、同じ世代として理解できる部分はあります。
とはいえ、理解はできても、身につまされる、我が身を振り返るといった感想は正直、全然ありません。田代壮介のような中高年は珍しくないのでしょうが、少なくとも私は女房にとっては「めざわりで、面倒で、ウザい」定年後ではない、と考えています。何やかやと動き回ってあまり家におらず、煙たく邪魔に思うヒマを与えていないようなので。