桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2019/11/19
内部告発



 2004年冬、元北海道警察釧路方面本部長(警視長)の原田宏二さんは札幌弁護士会館で道警の組織的な「裏金」をめぐる告発の記者会見を開き、注目を集めます。

 1年後、原田さんは『警察内部告発者』と題するノンフィクションを公刊。道警在職時代に経験し、自らも裏帳簿に関わり、月々手にしてきた手当(裏金)について、道警内外の動きなどを交えて詳細にフォローする、鮮やかなリポートに仕立てました。

 告発自体もう15年も前で、著者もすでに82歳。しかし今も「警察ジャーナリスト」を名乗り、札幌を足場に活躍されている、とのことです。

 『警察内部告発者』の分析を踏まえると、道各地の署長や本部の課長クラスらが受け取っていた裏金の交際手当(捜査協力者に手渡す協力費等を含む)は、民間ならそのまま交際費や業務協力費などの費目で予算・決算に組み込めるもののように思えます。毎年の異動に際しての餞別が内部で盛んにやり取りされ、本部の課長クラス(どうやら警視以上)になるとそれが束になって結構な額になる、という裏金餞別の慣習は、中小企業がメインの民間では一般的ではないとはいえ、これとて慰労金や報奨金の名目で決算の雑支出に計上できるようにも思えてきます。

 ノンキャリで任用され、道警のナンバー3にまで昇り詰めた著者はなぜ、40年近くロクを食んできた道警のヤミの部分を暴露したのか。それは、表立った規則に基づかず、「伝統」と惰性で続いてきた不透明な会計処理と、公的な税金によって賄われている行政会計の建て前に、放置できない隔たりがある、という反省と反発からのように思えます。

 裏金という悪習を生んだ警察の風土、警察庁採用のキャリア組が支配する自治体警察のもろさなど、著者は「恥多き警察官人生」を振り返りながら、警察の自浄力に期して古巣の悪行をつぶさに、理詰めで明かしていきます。

 しかも、告発しても、道警本部がうやむやにするという常套手段を取るには、原田さんは在職時のポストが高過ぎたし、元警視長はそのことが見えていたようにも思います。舌鋒は鋭く証拠に基づいており、内外で同調し、支援する人が多数にのぼることも見越して。道警を敵に回してもひるまなかった北海道新聞の戦闘態勢も立派だったと聞きます(全国紙はどこも腰が引けて道新にはかなわなかったようです)。

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