桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2018/05/02
財務省と取材



財務省の事務次官がセクハラ疑惑で辞任しました。ニュースで知る以上のいきさつは分からないものの、私はむかし1年ほど旧大蔵省の記者クラブ(財政研究会、略して財研)に在籍してざっと30人ほどの大蔵官僚(財務官僚)をそばで観察し、会話し、一部とは時に呑んでいました。古い経験ですが、当時を思い出し、ニュースにコメントできれば、と考えた次第です。

大臣が組閣ごとに代わる会長なら、事務次官はたたき上げの社長のようなポジション。事務方のトップとして省内をまとめ、一方で自らも日夜、情報収集に励み、当然メディアの上層部とも付き合っています。経済部長とか政治部長とかそれ以上とか。長く見知っているベテランの編集委員、解説委員なんかともサシで話しているはず。

もちろん、その相手が若い女性記者だったとしてもとやかくは言えません。今も昔も性別に関係なく、すご腕の記者はいますから。

ただ、政治家や財界人との交誼と同様、メディアとの会食も、情報収集や意見交換が目的のはずで、世論の動向、メディア側の問題意識など、なにがしか得ることを心掛けてこそ。それを意図する一方で、「抱きしめてもいい?」などというアホな妄言を口にしていたとすれば、気晴らしか息抜きか下心からの一対一だったのではないか。そういうのは自由奔放でも豪放磊落でも何でもなく、単に軽薄か、助平根性を小出しにしているというにとどまります。

一方、今回の報道では「特ダネを取るための(やむをえない)一対一の会食」云々というコメントがありました。しかし、海千山千の事務次官から特ダネを取るのは正直、相当に難しい。事務次官を含む高級官僚は非常に頭が良く、むしろ、さりげなくメディアをコントロールしようとすらします。言うなら、省庁の幹部は相手を信頼していても、特ダネをモロにメディアに教える、ということはほとんどありません。

せいぜい追認かヒントか誘導か、それは違うよ、というサインか。そして、幹部の漏らすこれらを識別するには、取材する側のセンスと蓄積と経験が欠かせません。幹部側も相手の質問や様子をみながら、そのレベルに合わせた応答しかしませんし。

ということで、一対一で会食すれば特ダネが近づいてくる、というほど簡単な話ではない。なぜなら、相手は曲がりなりにも公務員で、大抵のことを自分で差配できるワンマン経営者ではないからです。「次官に会ってネタ、もらって来い!」と指示する上司がいたとしたら、それは現場をよく分かっていないタテマエに過ぎないとも言えます。

もっとも、私が財研を離れた後、大蔵省と日銀で、マンガみたいな「ノーパンしゃぶしゃぶ」の接待汚職事件が発覚しました(1998年)。事件に対する反省と、「反省に対する反動」で財務省が再び変質し、取材の仕方がまた変わってきたのかもしれません。

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