桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2018/02/02
就業規則あれこれ その1



今回は本業に戻って「就業規則」の話です。
相当数の就業規則を作ったり、改定したりしているうちに書きたいことがいくつも出てきました。社労士業界ではよく話題になる半面、会社等の従業員の多くにとっては「ウチにもあったはず」「いや、一度もみたことがない」みたいな反応にとどまりがちなのが、就業規則。そこでまず、1本目として入口の話二つ三つから。

「就業」の「規則」といわれても今ひとつ語感が弱く、一般用語と業界用語の挟間にあるようにみえるのが、就業規則です。私も前職時代、数年ごとにもらう分厚い会社の就業規則など、きちんと読んだこともなく、中身にも関心が向かないまま。社労士になって以降、新鮮な目でさまざまな就業規則を読み、教わってきてようやくイメージが固まりつつあります。そんな立場からの話ですので、既存のオーソドックスな就業規則に慣れた業界の方々には耳障りなことも記しかねない点、前もってお断りしておきます。

就業規則は、会社等で働く労働者の義務と権利、および約束事等を文書にしたものです。いったん作成すれば、就業規則が、使用者と労働者の関係を拘束し、取り決めとして効力を持ちます。最低限守るべきなのは、労働基準法。平たくいえば、基準法を下地にした「職場のルールブック」です。

ルールである以上、時代の変化や法改正、会社内外の事情、助成金の要件の変更などに合わせて、随時改定する必要が出てきます。改定を後回しにし、現行の就業規則でやり過ごそうとすれば変化に対応できず、気づかぬうちに中身がいわば劣化していきます。

就業規則を「会社(職場)の憲法」に例える方がおられます。しかし、必要があれば変えていくという意味からすれば、憲法という例えは適切ではないようにも思えます。特に、英国などとは違い、日本の戦後憲法は、改正論議が本格化しようとも、容易には変えられないという、改定に対するハードルの高さが予感できます。

ところが、就業規則は、内容をより良くするためには半年に1回でも機敏に、柔軟に、しかもその都度、完成したものとして改定し、活用していくもの。「不磨の大典」扱いにするのは、現実的ではないように思う次第です。

時宜を得た改定をためらわず、タイミングを計って意識的に変えていくとすれば、心理的にも再編集を妨げる就業規則の「製本化」はムダである、ともいえます。とりあえず作成し、会社のどこかに置いておくのなら、カラーの表紙を付けたり、小冊子風に仕立ててもいいのでしょうが、変化に即して改定を続けていくのなら、体裁よりも、活用に耐える内容の充実を優先させたい。「創立マル周年を記念」してコストをかけて製本化なさろうとするのはご自由ですが、私はそんなことで作成に関わる売上を増やそうとは考えていません。

と言うと、労働基準監督署に就業規則の改定を届け出る際は、該当のページ、あるいは条文の抜き書きだけでも受理印はもらえる、改定部分は就業規則の原本にメモで書き込み、いずれまとめて改定すればいい、という声もあります。しかし、断片的でつぎはぎ風の改定は、いつどんな経緯で修正したのか、ということが作成を受任した社労士にしか分からず(あるいは社労士も覚えておらず)、発注した会社側にも改定の流れが説明できない、という無用な混乱のもとになりかねません。私自身、2度ほどそんな扱いづらい、ゴチャゴチャした就業規則に出くわし、困惑したことがあります。

勤務社労士が在籍している大手・中堅企業ならともかく、開業社労士が就業規則の作成・改定をお手伝いするのは、中小・零細企業が大半。しっかりした就業規則が欲しい、という依頼に対しては、形や体裁ではなく、内容と、臨機応変に内容を修正し、削除・加筆していく機動的な対応にこそ意味がある、と考えています。

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