桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2017/04/19
古本屋



今回も閑話休題(それはさておき)風の話です。
古本屋との付き合いはもう50年近く。若い頃はナップザックを手に、京阪経由でよく今出川通や東大路通の古本屋街に通っていました。1冊5円とか10円の文庫や雑誌を中心に。関東にいた通算7年ほどの間も時折、神田や早稲田の古本屋街に出掛けていました。

好きだったのは、本が探せるだけでなく、中に入ると外の音が遠くに聞こえ、ひんやりした静かで陰気な空気が味わえたからです(私は陰気な墓地やご詠歌が嫌いではありません)。椎名誠さんがデビューエッセイ集『さらば国分寺書店のオババ』(1979年刊)で描いた国鉄国分寺駅南口のあの古本屋にも数回足を運び、椎名さんが描く通り、険しい顔のオババに邪険に扱われた記憶があります。あそこも小さく、狭く、陰気で、しかし大量の古本が天井近くまで並んでいました。

イメージを一新したのが、1991年創業のブックオフです。数年後、創業者の坂本孝さんに神奈川県相模原市の本社で会ったことがあります。坂本さんは「本を文化財ではなく、消費財として扱う」云々とアピール。その後、彼はブックオフを去ったようですが、同社は今も800を超える店舗を展開し、アルバイトを中心に12,000人弱が働いているということです。

ブックオフはコンビニのように明るく、本が探しやすく、買い取った新しい本の売値は定価の半分、店頭在庫の期間が長くなるにつれて売値を変え、一律100円(税別)まで下げるというシンプルな商売を続けていることは、ご承知の通り。最近は経営が厳しいという話も耳にするものの、私は今も行動圏内に10店ほどあるブックオフのどこかに頻々と通うヘビーユーザーを続けています。

ロングテール論というのがあります。品目数で20%の商品が売上の80%を占めるのが「売れ筋」、残り80%の品目数ながら売上の20%にとどまるのが「死に筋」。ヨコ軸に発刊時期(新⇒旧)、タテ軸に売上をとったグラフに描くと右下がりの「L」字状になり、恐竜の尻尾(テール)にあたる「L」の横棒部分が右下がりのまま伸びていきます。大きくない書店は売れ筋本をもっぱら店頭に置き、死に筋本はやがて新刊市場から消え去る。ところが、アマゾンなどのネット通販では、昔の死に筋本も登録に残り、「L」の横棒の右端に埋もれている本が検索できます。

古本屋やブックオフには、アマゾンほどではないにせよ、ロングテール論が当てはまる一面があります。新刊の書店には既になく、探していた本がブックオフで偶然見つかる、というケースは何度も経験しています。あの嬉しさは格別です。

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