桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/12/17
やり取り5つ



今回は、これまでの社労士実務や、某行政機関で時々対応している「労働相談」でのやり取りで、記憶に残っている5つを対話スタイルでまとめます。「経」は経営者、「労」は労働者、「社」は意見を聞いたベテラン社会保険労務士、「高」が私です。

(1)
○労「会社を辞めることにした。人事課で手続きしていたら、退職金はないと言われた。夏と冬のボーナスももらっていない。株式会社だから、退職金とボーナスはもらえるはず」
○高「月々の賃金とは違い、退職金も賞与も、法律が会社に支払いを義務付けているものではありません。いずれも就業規則等で明示され、要件が揃っていれば支払われます。そうでないなら、請求するのは難しいでしょう」
○労「就業規則なんて見たことがない。ただ、ハローワークでもらった会社案内には、ボーナスがある、と書いてあったような気がする」
○高「ハロワの求人票は『釣り書き』のようなもので、それを足場に請求しても残念ながら効果はありません。就業規則のほか、労働契約書、労働条件通知書などに支給が明記されているかどうかです」

(2)
○経「最低賃金が今年も上がるらしいな。京都は10月に今の807円から831円に上がると聞いた。全部とは言わん。上がった分の一部でも国が出すのか? 補助金は出るのか? 春闘で国が民間の賃上げを要求するのと同じや。おかしいやないか」
○高「最低賃金絡みでは『業務改善助成金』というのがあります。ただ、会社内の最低賃金を数十円上げたときの経費等が出るもの。最低賃金をお役所が決め、クリアすることを民間に求め、従わなかったら法律違反というのは、趣旨は分かるものの、私もどこか変だなと思います」

(3)
○経「おお、高田はんでっか。HP見せてもろうたで。ちょっとウチまで来てもらえまへんか。会社の雇用保険とかの手続き頼みたいねん」
○高「了解しました」 (自宅マンションまで出向く)
○経「ウチは法人成りしたとこや。計算とか手続きとか、いろいろ任せるつもりや。とことんやってもらえまへんか(と、さりげなく二の腕に彫ったイレズミを見せる)」
○高「(イレズミとかマル暴のヒトは、危害が迫らない限り、さほど怖くはないので)手間ひまは惜しみませんが、できる範囲のことしかしませんよ」(その後、連絡が途絶え、3カ月ほど後のこと)
○経「わし、警察に逮捕されて拘置されとったんや。出てきたら、銀行口座が差し押さえられとった。どうにかならんか」
○高「弁護士の先生に聞かはったらどうですか」
○経「分かった。電話切るで」
(いくつかの手続き、給与計算のお手伝いなどをしたものの、代行手数料は請求書を送っても応答なし。勉強になりました)

(4)
○高「有期雇用を5年続け、6年目に入った労働者が申し込みすれば無期の契約に自動的に切り替わる、という『無期転換制度』が再来年(平成30年)の4月から本格的に始まりますね。労働契約法に基づくものですが、どことなく一方的です。経営サイドが事前にガードする手はないのでしょうか」
○社「就業規則に、例えば『有期契約は5年を超えて更新しない』のような規定を盛り込めば、クリアできます。就業規則を改定するなら早めに、ただし過半数代表の合意を得て」

(5)
○経「役所のHPに出てくる『FAQ』とは、何のことか。『Q&A』なら分かるが」
○高「『よくある質問』を『FAQ』と表記する慣わしが始まったようです。要は『Q&A』のことです。気取ってますね」
○経「もう一つ。お役所の文書やと、人の話とかを引くときのカギカッコで『犬が走る。』『苗木を植える。』みたいに、カッコ内の文末に読点(。)を入れる決まりになってるようや。おかしくないか」
○高「おかしいですね。行政機関の文書に蔓延している、ほとんど無意味な風習です。私は障害年金の裁定請求で必要な申立書などで普通に『苗木を植える』のように読点を入れずに書いていますが、受付で修正を求められたことはありませんし、支給開始決定もかち取っています」

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