桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/11/16
大統領選挙



米国大統領選挙でドナルド・トランプが勝ち、優勢が伝わっていたヒラリ―・クリントンが負けました。一連の経過をチェックしていて痛感したのは、クリントンに肩入れしていた多数のメディアの「偏向」です。

世論調査でクリントンが10ポイントほどの差をつけた時でも、自慢ではありませんが、私は接戦、もしかするとトランプが逆転勝ちするのでは、と予測していました。外交や内政、経済政策などに広げるとややこしくなるので選挙を巡るメディアの構えに絞りますが、米国のメディアの大半は選挙期間中、原則としてクリントンを支援する一方、ずっとトランプを警戒し、批判し、嘲笑し、揶揄するスタンスを崩さなかったようにみえます。

その偏向は、トランプを支持する「ブルーカラーの白人労働者」を侮辱するキャンペーンにつながっていました(しつこく「分析」してリポートすることもキャンペーンになります)。貧しいとされる彼らは、リベラルを嫌い、移民やイスラムを憎み、さらに自分たちの生活のことしか考えていない。言うなら、視野の狭い、見識の低い、頑固で愚かな下層階級である、というキャンペーンです。日本のメディアでも、したり顔でそう解説する面々が多かったようです。

仮に私が、ピッツバーグあたりの鈑金塗装工場に長く勤め、報われないまま、不平不満のカタマリになって暮らしているブルーカラーだったとします。そんな想像上のポジションに立って今回の米国メディアの「ブルーカラー侮辱キャンペーン」に触れていたら、どう思うか。納得して政治意識を変えるよう努めるどころか、「冗談じゃない。愚かなブルーカラーで何が悪い」と反発しただけのように思います。

日本でのある逸話を示します。高卒の男と、大卒の女が結婚し、いつしか夫婦仲が冷えた。同居は続けていたものの、会話はなくなり、必要な連絡の伝達は居間のホワイトボードに書くだけという「家庭内別居」。ある時、冷め切った大卒の妻が、高卒の夫に対するボード上の事務連絡の漢字にいちいちルビを振った。歩み寄りの機会を探っていた夫は、ルビをみて完全に関係修復を断念した、というものです。

この逸話は、私がむかし某女子大でメディア論の非常勤講師を3年務めていたとき、30人ほどの学生さんが毎年、最も身を乗り出して聴いてくれていたものです(どんなメディア論だ?)。ともあれ、この話と、米国大統領選におけるメディアのスタンスには、社会心理面でどこか通じるものがあるように思えてきます。

余計なことを言えば、「正しさ(正義)」「真実」「真理」みたいな言葉を前面に出す政治勢力からは距離を置いた方がいい、と私は常々考えています。へそ曲がりの身からさらに言えば、これらタテマエのスローガンには「偽善」や「欺瞞」や「権威主義」のにおいが付いて回ります。

ヘタレ半可通の中年社会学者が言っていました。「民主主義国家とは『正しい国』ではなく、『面白い国』のことだと思う」。ナイーブな(日本の)米民主党支持者?らにはカチンとくるコメントだと思いますが、私はこのヘタレ半可通の独り言に同感しています。

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