桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/08/17
年次有給休暇



今回も硬い話です。
6か月以上きちんと勤めると自動的に権利が発生し、働くべき日に休んでも「通常の賃金」等をもらえるのが「年次有給休暇」。一般的には「年休」又は「有休(有給)」と呼びますが、この消化率が全国平均で5割を切っています。厚労省は日本人の働き過ぎ、休み不足を正すため、年休の取得率アップを図ってキャンペーンを張っているものの、効果はあまりないようです。つまり、年休を目いっぱい取る人は(特に中小企業では)今も多くはありません。

正社員が4月1日入社で半年間、8割以上の出勤率で勤務を続けると、10月1日に年休10日が「法律上当然に発生」します。在籍が長くなれば日数も増え、6年半後には20日の年休がもらえます(年20日が上限)。時効は2年なので、使わずに貯まった分は権利発生の翌々年になくなりますが、それでも全然使わなければ最大で40日分の年休が残ります。バブルがうごめき始めた1987年の労働基準法改正で、パート・アルバイトにも「比例付与」方式で少なめながらも取れるようになりましたし、使用者が従業員に年休取得を意図的に働き掛ける「計画的付与」という手法も登場しました(お盆休みを年休扱い、誕生月休暇、など)。

年休は要件さえ揃えば自然に発生する半面、労働者が請求しなければ取得できません。同時に、労働者からの請求がない限り、使用者は年休を与えなくても基準法(39条)違反にはならない。昔あった年休の「買い上げ」も、退職前の未消化分を対象にした個々のケース以外はご法度になりました。減収を伴うことなく、労働義務のある日に休養させるという趣旨ながら、使用者側の「承認」は不要で、経営者や上司は職場の事情などで取得日を前後させる「時季変更」ができるだけ。年休をどう利用するかは原則、自由です。それでも消化率が低いのはなぜでしょうか。

同僚や上司が働いているのに「給料をもらいながら」休むことへの気兼ね。元々職場に年次有給休暇を取る慣行がない。「ウチは年休制度を導入していない」「パート・アルバイトには年休がない」などの勘違い。自分や子供が病気になった時に使うため、残しておく。働くのが好きだから、公休(所定の休日)だけで十分、という意識――。

私ども社労士が日ごろお付き合いしている中小企業の経営者からは「年次有給休暇は、賃金を払って休ませることの不合理に耐えて付与するもの」との声も漏れ聞きます。「パートを含め、お宅の会社はもっと年休を取らせる必要があります」と意識的に提案したことのない私自身、勤め人だった30余年の間、一度も年休を請求したことがありません(人事部が後付けで年休扱いにしていた可能性はあります)。社労士の試験勉強を始めるまで、年休と公休と特休の違いも知らなかったほど。もって瞑すべし、ということでしょうか。
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