桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/06/16
石油は無限?



6月12日付日経朝刊の大型特集「石油転変11回 『枯渇いつ? 繰り返す論争』」を読んで呆気にとられました。脇見出しは、石油資源量の「主力は有限説」ながらも「無限説も一時脚光」。中身を読むと「無限説」は一時脚光どころか、今も否定されておらず、もし立証され、確かな仮説として確立すれば、大変なことになります。

石油は20世紀半ば以降、消費量が急激に増え、21世紀半ばには「ピークアウト」、つまり残る埋蔵分を掘り尽して資源は枯渇する、という予測がもっぱらです。「あと30年も持たない」とか、原油価格が上がれば手つかずの油田にも技術が入り込んで利用可能な埋蔵量は増えていく、つまり「あと80年ほどは持つ」とか。いずれであれ、石油は有限で、使い過ぎていると早晩なくなってしまうという共通の認識が定着しているように思います。

石油は、おびただしく堆積した、微生物などの有機物が長い年月の間に変化して出来る。太古の植物類が圧縮されて石炭が出来たのと同じように、というのが、常識としての石油有限説です。

これに対し、日経の特集が紹介するのは、石油も天然ガスも無機物の炭化水素から生成され、元になる炭化水素は地球内部にほぼ無限に存在する、というもの。近年になって台頭し、米地質家協会の研究会議(2005年、カナダ)では、地質学者らが激しく論争し、しかも決着はつかなかったということでした。

特集によると、無限説登場のきっかけは2000年以降、有機物起源では説明がつかない油田が見つかったこと。例えば、ベトナム沖の油田は花崗岩の地層内で発見された。しかし、マグマから出来た花崗岩に有機物の死骸が堆積していたとは考えにくい。しかも、高温高圧の環境を実験室で再現すると、有機物なしでも炭素化合物が出来るという研究成果が現れた。つまり、無機物起源説に立てば、石油は今も地球の奥深くで産まれつつあり、いわば無尽蔵に存在する。一段の掘削技術が開発されれば、枯渇の心配はなくなる、という意表をつくストーリーです。

私は科学ニュースが好きで、それが高じてCO2温暖化仮説を疑ったり、脳死体からの移植を怪しんで「臓器提供意思表示カード」では「臓器を提供しません」にマルを付けたりしています(ポンコツなので、移植医も「こいつのは使えない」と私の脳死体をまたいでいくでしょうが)。それでも、石油は無限にあるという、有限説に染まっていた身には荒唐無稽にみえる、一見オカルトっぽい仮説はすぐにはアタマに馴染んできません。

無限説に関心を持つのは、朝毎読産はともかく(笑い)、日経には、時流に迎合しない、冷静で客観的な科学記事が多いからです。本チャンの経済記事は大企業寄りの経済成長・株価至上主義ですが、それはともかく、日経が突き放さずに正面から無限説を取り上げている以上、気になるところ。特集では、エネルギー論の京大名誉教授が「仮説としては面白いが、経済的には資源にならず、役に立たない」と慎重ではあるものの、全否定はしていないようです。

くどいようですが、私はCO2温暖化仮説は無理が多いと考えていますので、有限であれ無限であれ、石油の大量消費と気候変動にはあまり(というか、ほとんど)関連はなく、残るのは、大気汚染の一因となる硫化酸化物等の抑制技術がどこまで進むか、ということになります。ともあれ、なかなかに面白い話です。

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