桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/06/04
マイナンバー覚書3 拍子抜け



久しぶりにマイナンバーの話です。
昨年の春先から徐々に騒ぎが広がり、大きな本屋には「マイナンバー」コーナーも登場して数十種の入門書、ガイド本がずらり。同10月から「簡易書留」にて全世帯に個人番号通知カードが郵送され始めたころは、テレビのニュースでも「運用近づくマイナンバー」を盛んに取り上げていました。

そんな前触れの中ではさまざまな「近い将来」の予測も語られています。
「すべての国民をターゲットにした『管理(監視)ツール』の登場」「税金、年金、健保、医療情報、さらにはいずれ預貯金口座も(義務的に)マイナンバーに『ひも付け』されるはず」「個人保有のお金を行政・税務当局が労せずに(おおむね)フォローできる(課税逃れができなくなる?)」「マイナンバーを組み込んだ高度なICカード1枚で、大抵のことにアクセスできる『マイナンバー万能社会』がやってくる」――。

マイナンバーは基本的には、世論の後押しもないまま、行政の都合だけで始まったものです。同時に、お役人は慎重に振る舞うよう、大言壮語しないよう教育されていますので、行政側が「マイナンバー夢物語」めいたことを披露する場面は少なく、行政に代わってマイナンバーをPRしてもよかった政治家も及び腰のままでした。騒ぎで目立ったのは「マイナンバー対応会計ソフト」などを売り込もうとしたIT関連業界だけだったかも知れません。

しかし実際の話、今年1月から運用開始となったマイナンバーをめぐるニュースの低調なこと! 拍子抜けもいいところです。所得税の源泉徴収事務で必要な扶養家族のマイナンバー集め以外で、大量のマイナンバーが扱われ始めたのは雇用保険の加入・脱退届(被保険者資格取得・喪失届)ぐらい。この手続きは、私ら社会保険労務士が依頼を受けて代行することの多い実務の一つ。私もすでに複数回、労働者からのマイナンバーの提供を企業側に求めたり、ハローワークにマイナンバーを持ち込んだりしています。

ただ、私のここ数か月の実務でも、マイナンバー集め(労働者からの提示)がスムースに行かないことがありました。労働者から会社への連絡にあったのは「個人番号通知カードを失くしました」というのが1件、「国元に置いてあるはずで、いま手元に見当たりません」というのが1件。

しかし、前者の場合、ご本人が市役所などでマイナンバー付きの住民票を請求すれば固有の12ケタは分かりますし、再発行も可能です。後者の「国元にあるはず」のときは、某ハロワの窓口で事情を説明しながら資格取得届を提出すると、届はマイナンバー記入欄が空欄のまま受理され、同時に「個人番号登録・変更届出書」という用紙をもらい、「少なくともこの方の離職時までにこの届出書にマイナンバーを記入して当ハロワまでお送りください」と案内されました。

しかも、昨年からマイナンバーと「簡易書留」による手堅い郵送はセットで推奨されていましたが、窓口スタッフは「送付は普通郵便でいい」とのこと。労働者のために資格取得・喪失届を急ぎ受け付けし、マイナンバーは後回しになってもやむなし、という優先順位がうかがえる対応です。某ハロワでの経験ですが、窓口スタッフの独断であるはずはなく、全国ベースの通達か何かに沿った説明でしょう。

政府の個人情報保護委員会は先月24日、マイナンバーの漏えいなどのトラブル報告が昨年10月〜今年3月に全国で83件あった、と発表しました(日経では7行のベタ記事)。1か月でざっと14件。少な過ぎる、ウソだろう、と私は思います。紛失や記入の間違いや何やかやを含めるなら、マイナンバーは立ち上げから運用に安定を欠いていますし、推進するはずの行政側の慎重さも相まって「様子見」のレベルにまで盛り下がり、スタートダッシュできなかったのではないか。

マイナンバーカード(身分証明書にもなるという写真入りのICカード)の交付ハガキが申し込みから半年過ぎてやっと先週、自宅に届きました。事前予約のうえ市役所までお越しを、とのこと。しかし残念ながら、この忙しいなか、マイナンバーカードなんか受け取って何の足しになるのか、と腰が重くなっています(無料発行なので、行ってきますけど)。

お問い合わせ
■高田社会保険労務士事務所/■〒612‐8083 京都市伏見区京町6‐51‐1 ハイツ美好103/■TEL&FAX 075-748-6068/携帯電話090‐9881‐5702

メールでのお問合せ