桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/04/01
科学的ではない?



コップの表面に「ありがとう」と書いた紙を貼って中の水を凍らせると、きれいな氷の結晶ができる。ところが「ばかやろう」と書いた紙だと、不揃いな気味の悪い結晶しかできない――。

IHM研究所の江本勝氏(故人?)が1999年、写真入りの著書『水からの伝言』で紹介した「実験結果」です。「ありがとう」と「ばかやろう」には応用パターンがあり、例えば、炊飯器に「ありがとう」の紙を貼って白米を炊くと、おいしく、容易には腐らないごはんができた、しかし「ばかやろう」のごはんはすぐに黒く腐ってしまった――といった次第です。

ウィキペディアによると、『伝言』シリーズは45カ国語に翻訳され、250万部を超えるロングセラーになったとのこと。私はこの、多くの科学者が批判を浴びせた『伝言』騒動は昔の話と思っていましたが、今も大きな書店では写真集などが平積みになったまま。今年2月に出た、石川幹人・明大教授の『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書)はいま現在の「疑似科学」として『伝言』を含む「水ビジネス」全般を突き放して解説しています。

実は私、『伝言』を紹介する江本氏の講演会に出向いたことがあります。2002年ごろ、「面白いらしいよ」という知人に誘われて。好奇心から、確か2000円ほどの参加費を払って。300人ほどが入る会場は満席で、江本氏が次々に「文字に反応してできた結晶」のスライドを映し出します。結晶ができるまでの過程をすっ飛ばして結果だけを見せる写真を前に、ヒトのいいさすがの私も「これはひどい。詐欺ではないか」と一瞬にして白けました(前の方の席にいた男性が江本氏の「訓戒」にいちいち頷いていた姿は記憶に残っています)。

『伝言』が批判を集めたのは、一部の小学校の道徳教育で写真集が教材に使われたのが、きっかけ。「ありがとう」の気持ちを忘れずにいると、無機物の水も言葉を読み取って反応するというとんでもない「実験結果」は、児童をまどわすだけだ、というわけです。これに対し、江本氏自身も、『伝言』はファンタジーであり、ポエムであると弁明したそうで、科学かエセ科学か、という論争自体は決着がついたはず、とみて良さそうです。

石川教授の「疑似科学」批判は、水がらみのビジネスのほか、昔から論議が続く「超常現象」「超能力」なども取り上げています。ここでオヤっと思ったのは、千里眼や透視能力などの「超能力」(ESP)実験の集積をみると、わずかながらも「肯定的なデータ」が存在し、超能力を全否定するところにまで踏み込んでいない、ということでした。

超常現象がらみで思い出すのは、文化庁長官も務めた河合隼雄さん(故人)の講演。ユーモアにあふれた、あの高名な臨床心理学者は、肉親の事故や死亡を教える「虫の知らせ」について「現代の科学は(こうした超常現象を)承認していません」とあっさりと断りながら、楽しげに「虫の知らせ」の不思議な事例を挙げておられました。懐が大きい、ということだと思います。

科学か科学でないか、という話で最後にもう一つ。石川教授の『疑似科学』批判では「地球温暖化」仮説についても触れています。私は当メルマガで数回お示ししているように「温暖化仮説懐疑論」に立っていますが、科学基礎論などを専攻する石川教授は、CO2温暖化論は反証実験のできない制約の多い科学であり、いま地球は(多くの太陽物理学者が言うように)「寒冷化」に向かっているのでは、とコメント。「最近の論調では、地球の自然変動の要素と、人工的要素がバランス良く語られるようになってきた」(254頁)とも語り、予算とポストに左右されがちな御用科学者の(不完全な)仮説、CO2温暖化論べったりではないことが分かって、得心しました。

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