桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/02/16
屋台での話



大阪に行く機会が2回ありました。奈良県生駒市の自宅から近鉄等でざっと40分。京都市内に向かうより近く、堂島及び西梅田に本社があった前職時代に延べ20年近く通った街です。ただ最近は、用向きがないと足を運ばなくなり、今回は半年ぶりぐらいになります。

そこでふと、だいぶ前に某定期出版物に毎月ペンネームで寄稿していた駄文の一つ(「屋台での話」)を思い出しました。以下、多少の手を加えて転載します。私が書いたものなので、著作権の問題はない、と思います(定期出版物も廃刊になりましたし)。手抜きの「コメント」になりますが、ご容赦ください。
……………
大阪にいた頃に目撃したある光景を、最近よく思い出す。
東大阪市・近鉄沿線の、とある駅前。まだ新しい駅ビルに刃向かうような、雑多な気配が残る駅前ロータリーに屋台のラーメン屋があった。ある夜、飲んだ帰りにそこを見つけ、ひとりテントに潜り込んだときのことだ。

先客が5人。やはり飲んだ後らしい中年男女のにぎやかなグループで、職場か趣味の会か何かの連れのように見えた。ラーメンを食べ終わったところらしく、勘定を済ませてテントを出る折に、面々が屋台の店主に明るく声を掛けた。

「おっちゃん、うまかったでえ」「久しぶりにおいしいラーメン、食べたわあ」「酒の後はラーメンに限るなあ。おっちゃん、おおきに」――。

口調に不自然なところはなく、私も、そんなにうまいラーメンかと期待してテーブルの上を見て驚いた。5つのどんぶりのほとんどが食べ残してあり、ひと口食べただけで箸を置いたようなものもある。私もラーメンを頼み、無理して半分ほど食べたが、スープはぬるく、麺は団子状で、食えたものではなかった。先客の5人はそれを分かっていながら、老齢の店主を気づかって気さくに礼を言ったのだ。

他の都府県の人間なら悪態の一つも漏らすか、憮然として金だけ払い、黙ってテントを出るかだろう。それほどにまずいラーメンだった。しかし、商都・大阪の面々だからこそ、相手を気づかい、心になくても、条件反射のようにさりげなく礼を返せたのではないか。皮肉でも偽善でもなく、自然に。そうとしか思えない展開だった。下手な理屈立ては避けたいが、大阪人の、他人あるいは「商い」をする人への憎いまでの心配りがうかがえる場面だったように思う。

私も「おおきに」と短く礼を言って勘定を済ませ、屋台を離れた。店主は困惑したような、泣き出しそうな顔で「えらいすんまへん」と応えたように思う。しかし、こちらは「大阪人の気づかい」を目の当たりにした印象を胸に、心地よく家路につくことができた。(中略)

東大阪のラーメン屋台は、数カ月後に訪れたときも駅前に店を出していた。ラーメンはやはりまずいままだったろうか。
……………
という次第で、同じ関西でも、京都ではあんな光景にはまず出くわさないだろうと思います。大阪人特有の「厚かましさ」「お節介好き」とは似て非なるもの。東京や名古屋でもほとんどありえない話のようにも思えてきます。

 

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