桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2016/01/16
消費者庁を徳島に?



 面白い話が入ってきました。
 自公政権が例の「地方創生」の一環として「消費者庁」を東京から徳島に移転させる方針を掲げた、というニュースです。一気に噴き出る反対論。私の感想は「反対論にめげず、移転構想はどんどん進めて欲しい。それが官僚やマスコミの抵抗を突き破る政治の役割ではないか。もっとも、構想は9割以上ポシャるだろうけど」といったところです。

 「地方創生」の目玉の一つだという「政府関係機関の地方移転」構想を踏まえた昨年末の徳島県知事の要請がきっかけのようです。これに対し、河野太郎担当大臣が今週12日の閣議後会見で「非常に可能性のある提案」と前向きに受け止める旨、表明。たちどころに主だった消費者関係団体の全部と日弁連が反対を表明した、という流れになっています。河野大臣はそれでも屈せず、消費者庁長官らを1週間ほど徳島に「出張」させて現地の様子を見させる、という展開。このあたり、体質的におかしいのか、私には面白くてたまりません。

 消費者庁は「消費者行政の一元化」を目的に2009年にできたばかりの政府機関。いわば「国民の側に立つ行政の司令塔」であり、在京の関係団体にとっては(ひらたくいえば)遠方に移転されると行き来が大変だ、国会からの呼び出しにも即応できない、といったところが反対論の眼目のようです。また、ネットには省庁の方々は「都落ち」にウンとは言わないだろう、という声が出ている一方、「なんで徳島くんだりに」という禁句はまだ前面には出ていないようです。

 なぜ私がこのニュースを面白がるかというと、前職時代のバブル景気のころから本格化した「首都機能移転構想」に興味を持ち、多くの方に教わり、自分でも調べて、書いたり、市民講座の講師として話したりしてきた、といういきさつがあるからです。

 遷都論や首都機能移転論はだいぶ前から提言が繰り返されています。1992年には「国会等移転法」も成立しました。それでも、一部機関が埼玉や神奈川などの近所に引っ越ししたほかは、事態はほとんど変わっていません。霞が関の省庁庁舎の新増築も盛んです。省庁の方々および、私もかつては末席に連なっていた在京のマスコミが本音部分で相手にしていない、必要性を認めていない、地理的にみても東京がセンターであることに何の問題もない、という構えを変えていないからです。

 今回のニュースでは徳島以外にも、京都が文化庁の移転を求めているという府知事の動きが並記されています。むかしからの話です。アジア重視を意識して外務省を福岡に、むかしの商都・大阪に通産省(現経産省)を、といったあたりが何度も出ては消えていますから、今回もその蒸し返しでは、とも思えてきます。そういえば、京都はむかしは文化庁ではなく、文部省(現文部科学省)本体を引っ張って来よう、という話でした。

 消費者庁移転の反対論に対しては、テレビ会議の活用や、国会対策のための消費者庁東京事務所(分室)を開くなどのアイデアも出ています(直に向き合わないテレビ会議は、報告の交換はできても、会議にはなりませんが)。しかし、私は延々と続いているカラ騒ぎを多少なりとも知っていますので、繰り返しますが、徳島への移転構想はムリだろう、と見込んでいます。文化庁の京都移転あたりは騒ぎの「落としどころ」として日の目をみる可能性ゼロではない、とは推測するものの、そうなると今度はこんな話をつい思い出してしまいます。

 明治維新で首都が、皇室もろとも京都から東京に移ったのは、政治・行政の中央集権化を図ろうとした近代国家としての必要性と同時に、京都側の事情が絡んでいた。保守的・閉鎖的で裏表のある「いけず」な気風が残っていた京都を、進取の気性に富んだ維新政府が嫌ったからだ――。
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