桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2015/12/17
過重労働



日曜夜の連続ドラマ『下町ロケット』(TBS系)を毎週観ています。銀行員が主人公だった『半沢直樹』と同様、原作は池井戸潤さん。しかも、福沢諭吉の孫の孫、福沢克男さんが引き続いてのディレクターということで、テンポも描写も、勧善懲悪の筋立ても似ています。

私は2本とも原作を読んでいますが、いつも感心するのは、セリフ回しの面白さがドラマではさらに磨きがかかっているように思えること。それが、オーバーアクション気味の配役の演技にマッチしていて飽きさせません。シンプルで分かりやすいドラマです。

という次第で、狡猾そうな悪玉が顔をゆがめて悪態をついていても、隠忍自重の善玉がいずれは勝つ、悪玉をやっつける、お天道様は誠実で勤勉で人間味のある彼らを見捨てない、という展開が始めから予想されているので、安心して観ることができます。

ところで、『下町ロケット』で目を引くのは、主人公が泣いたり笑ったりして皆を引っ張る「佃製作所」の技術者らがずっと残業、ときには泊まり込みで仕事に没頭している場面が多いことです。過酷で難度の高い仕事に弱音を吐く端役もなくはないにせよ、企業の人事労務方面で勉強したり、実務面でお手伝いしている私らの側からすれば、時間外(+25%)、午後10時以降の深夜勤務(同)、休日労働(+35%)の割増賃金が付いているのだろうか、などというヤボなことを考えたりします。ドラマの意図からすれば、佃製作所からサービス残業を強いられているとは思えず、彼らは勇んで居残っている、寝食を忘れて仕事に没入している、佃製作所も時間外・休日労働手当をきちんと払っている、ということだと思われますが。

厚生労働省は11月「過重労働解消キャンペーン」を全国的に推進し、その過程で、長時間労働・過重労働、賃金不払(サービス)残業に関する相談や訴えが当局に多数寄せられた、といいます。「ブラック企業」という企業分類の見立ても定着しているようです。一方で、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)という、抽象的なスローガンも、徐々に浸透し始めているようにもみえます。

早い話、私はとある行政機関で7時間勤務(9〜17時・昼休み1時間、週2回ほど)の非常勤職を拝命していますが、ここだけの話、「8時間拘束(7時間労働)がこんなにラクだったとは」と痛感しています(能動的なことはせず、時間をつぶしているだけ、という見方もできますが)。定時退社なし、深夜勤務続き、大きな案件があれば3カ月ほど土日なし、みたいな前職時代の「楽しかった過重労働」を思えば、職場というのは千差万別だ、とつくづく思います。

過重労働が「楽しかった」というのは、つまりは仕事中毒ということで、一種の病気といえなくもありません。しかし、長時間労働が続く中で感じていた(風邪ひき始めの微熱に似た)高揚感には正直、忘れがたいものがあります。良し悪しではなく、そんな経験の積み重ねが意外なプラスになっているのでは、と思いたくもなります。

『下町ロケット』は来週の20日放映が最終回。他ではめったにテレビを観ない私も、フィナーレというか、クライマックスを楽しみにしているところです。 

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