桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2015/09/02
リニア新幹線



 リニア中央新幹線の品川―名古屋間(286キロ)が2027年に開業し、2045年にはさらに名古屋から新大阪(152キロ)まで延伸され、全線がようやく開通するということです。事業主体になるJR東海が方針を表明し、国交省が後押ししていますから、多分そんなふうに計画が進むのでしょう。

 最高速度は時速505キロで、品川―新大阪を1時間7分で。1人を1キロ移動させるのに使う電力は、今の新幹線の3倍、運賃は1.4倍ほどになる見込み。そんな新ルートの鉄道が必要なのかどうか、という論議は別として、ともかくも10兆円弱のコストを要する超大型プロジェクトです。

 東名間は12年後なので、そのころ「日暮れて道なお遠し」と嘆いているだろう私も、部分開通のニュースをテレビで見ている可能性はあります。しかし、名古屋―新大阪の延伸になると、今から30年後。生き延びている見込みは五分五分、仮に生きていたとしても(ヨイヨイになって)全線開通の意味が分かるだけの理解力が残っているかどうか。

 そんな情けない予感を覚えつつ、リニアのことを書くのは、30年を待たずして名古屋以西のルートが京都を通るか、奈良を通るかがはっきりするからです。京都は私がいま主に仕事をしているところ、奈良は住んでいるところ。無関心ではいられません。

 リニア新幹線の整備計画は、名古屋から三重を経て奈良北部を通過し、大阪に入るコースを示しています。東海道新幹線と接続するリニア名古屋駅の次が、リニア奈良駅という次第(名阪の中間、伊賀市に途中駅を設ける案もあるようです)。もっとも、県内では奈良市、大和郡山市、さらに私が住む生駒市などが「リニア奈良駅をこちらに」と誘致活動に入っていて候補地はまだ固まらず。なにぶん先の話なので、綱の引き合いといっても緊張感がなく、どこか大らかな雰囲気です。

 一方、京都は30年後のリニア延伸をにらみ、何ゆえにこの日本最大の観光都市を素通りするのか、と既定の計画に反発し、いわば巻き返しを図っています。とくに京都が先例として挙げるのが、こんなエピソード。つまり、今の東海道新幹線にしても、戦後すぐの計画では東海道本線の京都駅は通らず、少し南の方を通過する(または新駅を造る)となっていたのを、京都の官民が運動して京都駅に新幹線を停めるように計画を変えさせた、というやないか――。

 京都サイドは、首都圏から奈良に入る観光客は年間300万人、京都は1200万人という数字を挙げるなど、アピールに励んでいます。そんななか7月には、米国の大手旅行雑誌「トラベル+レジャー」が2年連続で「世界ナンバーワンの観光都市に京都を選んだ」とするニュースも流れて話題になりました。

 もっとも、ランキングをみると、ベスト10にはイタリアのローマとフィレンツェ、スペインのバルセロナなどが入っている一方、首位の京都に続く世界2位の観光都市は、2年ともに米国東部のチャールストン(ご存じですか?)。世界基準のランキングというより、アメリカの一雑誌が選んだだけの格付けにとどまる印象はぬぐえません(水をかけるようで恐縮です)。

 一方、嘉田由紀子さんの後を継いだ滋賀県の三日月大造知事は昨年秋、リニア新幹線に絡めて「何でもかんでも京都ということでなくてもいいのでは」と語りました。嘉田前知事が京都ルート案を支持し、「滋賀県内での中間駅の期待」を表明していたのを軌道修正した格好です。

 こんなふうにみていって、私も今の時点では「予定通り奈良でいいのでは?」と漠然と考えるに至っています。「世界一の観光都市」であるなら、京都は奈良経由のリニアの全通を余裕をもって受け止め、来たい人は名古屋から在来の新幹線で、あるいは新大阪からのJターンで京都入りしてもらえばいい――。

 京都の街を歩くと、今でも大層な数の観光客に出くわします。外国人もすこぶる多く、時折「十分に人を集めているのだから、リニアはひなびた奈良、法人税収が都道府県別で最も少ない奈良に譲ってもいいのでは?」と思う次第です。今のところ。 

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