桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2015/03/02
マイナンバー



 マイナンバー制度が来年1月から運用開始となります。マイナンバー法も成立済み(2013年5月)で、むかし騒ぎになってストップした「国民総背番号制」構想がIT化の進展を受けてよみがえる、という流れです。

 今年10月から、全国民に12ケタ(つまり1兆未満)の異なった番号が個々に割り当てられ、来年1月から希望者を対象に顔写真入りの個人番号ICカードの無料配布が始まる予定です。ベースになるのは住民票コード。その1月からは税金の徴収(納税)と雇用保険、再来年からここに年金と健康保険が加わるという日程もみえてきました。

 社労士の間でも、これら労働社会保険の手続きがマイナンバーで効率化される半面、本人確認や個人情報の一段の保護が求められる、として関心が高まっています。文字の書き込みから、マイナンバーという数字入力(デジタル化)の比重が高まり、ネットワークを介した個人データの集約化が全国的に進んでいくわけです。

 推進・賛成論と慎重・反対論を並べてみます。
 まず、推進・賛成論。日本は住民票コード、基礎年金番号、健康保険番号、パスポートナンバー、納税者番号、運転免許証番号などが別個ばらばらで、所管省庁の縦割りそのまま。行政事務のうえで、効率面での改善の余地があり、こんな状況は先進国では珍しい。しかも、デジタル化が進み、各行政機関の連携がうまくいけば、全体をカバーできる課税や保険料徴収も可能。「消えた年金記録」のような失態は個人情報の一本化で防げる、という立場です。

 内閣官房のHPをみると、「マイナちゃん」が「公正・公平な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」の3つの目的をQ&A式でアピールしています。

 一方、SF映画によくでてくる、コンピュータが人間社会の全部を管理し、コントロールするという「近未来のおぞましい予感」を前に、慎重・反対論にも根強いものがあります。個人に対する管理強化への反発、行政による監視システム(?)の構築に向けた警戒、個人情報を行政が独占的に吸い上げることへの不安、そして情報が流出・漏洩する、あるいは「なりすまし」のリスクへの危惧などです。

 例えば、個人の納税や資産状況が把握できることから、生活保護受給資格のチェックにも使えますし、税金滞納などに対する預金封鎖、犯罪前科や金融ネットとの接続による信用情報の照会など、個人データを一元的につかむことで行政側(あるいはハッカーなど)にできるだろうことはいくつも予想できます。また、ある調査では、個人番号ICカードは「失くすと危ないのでは?」という声が多かった、という当然の反応もあります。

 現状のままでも、我慢できないほどの不便はうかがえないうえ、マイナンバー制度導入のためにIT産業が受注する情報公共投資は数千億、あるいは1兆円を超えるという観測もあり、この辺りも慎重論サイドで問題視する人がいるようです。

 先行した住民基本台帳のネットワークは人気のないまま。住基カードは私も持っていますが、証明書等の発行料金が少し安くなる、コンビニでも住民票が取れるという以外に、持って良かったという実感はほとんどありません。マイナンバーも同様の過程をたどる可能性はゼロとはいえないようにも思えてきます。

 ブレーキをかけながら車で坂道を上がる、という具合にことは進んでいくのかもしれません(構想が完全に消滅することはないでしょう)。私はマイナンバーの導入に異議は唱えないものの、万全の対策をほどこさないと、予想もしなかったマイナス部分が表面化する恐れもあるのでは、とつい想像してしまいます。 

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