桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2014/12/20
ある公判



 今年5月、京都市内に事務所を構えていた社会保険労務士が「雇用保険・基本手当(失業手当)の不正受給」で京都府警に逮捕されました。いま京都地裁で公判が進行中で、私も関心があって数回、地裁に足を運んで傍聴しています(社労士の名は摘発時、新聞に出ていますが、ここでは単にA被告としておきます)。

 傍聴して聞いた起訴状によると、事件は、A被告が会社社長らと共謀し、会社の従業員多数が退職したとハローワークに虚偽を申告、基本手当数百万円をだまし取った、というもの。罪名は詐欺。同時に摘発された社長らと共に、A被告は罪状を認めており、前回傍聴した公判では、大詰め間近の証人調べに入っていたようでした。

 新米の私は、ベテランの部類に入るらしい40代のA被告のことは直接には知らず、一方で彼をめぐる風評を再三、耳にしていました(業界内で目立っていた、ということです)。

 一審の判決言い渡しは、新たな証拠調べなどが入らない限り、たぶん来年春ごろ。という次第で、公判の途中ですが、法廷でA被告の横顔を眺め、検察・弁護双方が繰り出す質問と証言席からの応答を聞き(全部ではありませんが)、さらに彼がネット上に公開していたブログなどを見て、私なりに思ったことを3点、以下に記しておきます。

 まず、一連の事件にからんでA被告が受け取っていたという報酬がそれなりに高額だったこと。共謀した社長は、基本手当の申請だけでなく、行政官庁への各種届出なども、A被告(行政書士の試験にもパスしていたようです)に代行を任せ、どうやらA被告側の「言い値」で手続き関連の報酬を渡していたようにみえます。A被告を信頼していたのか、他に頼む先がなかったのか、「相場」を知らなかったのか、口八丁で言い値を呑まされたのか、そのあたりは不明。少なくとも、安値のダンピングで手続き代行を請け負っていた、ということではなかったようです。

 一方、A被告がネット上に公開していたブログ等は正直「こんなこと書くか」と思わせるほどにあざといもの。ブログは日記なので、エグいページはネット上にも結構あります。A被告のは「大抵のことは出来ます」という事務所PRの半面、事件発覚前から、何らかの理由・事情で追い詰められていた、焦っていた気配がうかがえるものでした。

 三つめは、事件前からのA被告の「仕事ぶり」は、ハローワークほか行政窓口でも「認知」されており、捜査当局ともども周到に準備して摘発に踏み切ったのでは、ということです。

 例えば私ごときでも、雇用保険の被保険者資格取得届などで「17条付記」と刻まれたハンコを押せば、労働者名簿などの提出はなくても可ということになっています。ハロワの窓口で聞くと、「社労士さんとの信頼関係があるからこそ」との返事。事件が起訴状どおりであれば、A被告はその行政との信頼関係に乗じて、または逆手にとって手続きを踏んだのでは、と思われます。ところが、天網恢恢疎にして漏らさず、呆気なくというか、ようやくというか、強引な所業はついに露見してしまった、ということのようでした。

 この公判については、また追って報告することとします。 

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