桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2014/11/02
障害年金認定の地域格差



 障害年金には障害基礎年金(1、2級=国民年金)と障害厚生年金(1〜3級など=共済年金を含む)があります。日本年金機構や市町村から連絡が届く老齢年金や遺族年金とは異なり、障害年金は自ら受給めざして動かない限り、もらえません。また、障害年金をもらうにはいくつもの要件があり、すべてを満たして初めて支給が決まります。

 要件のうち、最も重要なのは、請求する方(患者さん)を診ている医師が作成する診断書。それが年金支給の目安に当てはまるかどうかを審査するのが、認定医です。また、障害厚生年金は年金機構本部が委嘱する認定医が審査するため、いわば全国ベースで支給の可否が決まります。これに対し、障害基礎年金は都道府県別の年金機構事務センターが委嘱する認定医が、いわば地域ごとに審査する体制になっています。

 前置きが長くなりましたが、私は最近、この自治体単位の障害基礎年金の審査に、地域格差があることを知りました。偶然手にした中日新聞(9月13日付)が特集していたもので、一読して「何ゆえに?」と不審を覚えました。

 特集によると、2010〜12年度の障害基礎年金の不支給率の全国平均は12.5%。逆にいうと、請求者100人に対し、87.5人が支給OKの通知を受け取っている計算です。ところが、都道府県別にみると、最も不支給率が高いのは大分の24.4%、逆に低いのが栃木の4.0%。6倍以上の差があります。言い換えると、100人が請求して、栃木は96人までが支給決定となっているのに、大分では75.6人どまり。障害年金の請求は私ら社労士が代行することが多く、自治体ごとの社労士の力量に大きな差があるとは考えにくいので、この地域差は認定医サイドの問題ではないか、と推測できます。

 そこで、まず年金機構の相談窓口「ねんきんダイヤル」で国年、厚年の障害認定システムについて聞くと、「障害基礎年金も障害厚生年金も全国ベースで審査しているので、仕組みは同じです」と、誤った答えが返ってきました。「認定システムは異なるはず」と重ねて聞くと、「その辺り、現場の話なので、年金事務所にお聞きになっては?」との応対(頼りない相談員です)。

 やむなく某年金事務所に訊ねると、「確かに国年と厚年では認定医のシステムが異なります。もっとも、都道府県別の格差の原因については、私らにはよく分かりません」との返事です。

 障害年金の請求は、どこの年金事務所でも受け付けます。しかし、審査段階になると、請求者が住む自治体の事務センターに書類一式が回付される、とのこと。近畿2府4県では、不支給率は京都が12.4%と全国平均レベルで、大阪14.0%、兵庫22.4%、奈良16.7%、滋賀16.3%、和歌山12.8%のいずれよりも低くなっています(つまり、支給決定率が最も高い)。そこで、神戸に住む人が「京都は通りやすいと聞いた」と私に請求代行を依頼し、私が府内の年金事務所に書類を出すまでは問題ないとしても、審査の時点で、不支給率の高い兵庫の認定医の側に書類一式が戻されてしまうわけです。

 なお、四国4県や新潟を含む北陸4県はいずれも不支給率10%以下です。地域的に、認定医が請求をきちんと受け止め、患者さんサイドに立って審査にあたっているようにみえる、と考えるのは、推測が過ぎるでしょうか。

 認定医は障害厚生年金の先生方を含め、全国で216人。単純計算すると、都道府県別では平均わずかに4.6人(内訳は非公表)。障害年金の請求件数が年々増えるなか、自治体によって受給できるかどうかのハードルの高さが違うのは、フェアではありません。マニアックな話かも知れませんが、記しておく意味はあるはず、ということで以上、長々と綴った次第です。

 

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