桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2014/08/03
ウクライナ謀略説



 ウクライナとロシアの対立が、欧米vsロシアという構図で語られています。報道では、米国とEUのスタンスの違いの強調、ほとんど米国に追随するだけの日本、という恒例のパターンが目立ちます。とりわけ、先のマレーシア航空機MH17の「撃墜」は、「ロシアから武器供与を受けたウクライナ東部の親露勢力」によるものという見立てが主流になっているようです。

 つまり、西側のマスコミは、狙い撃ちしたのか、誤射だったのかは不明ながら、撃ったのはウクライナ東部の親露勢力だった可能性が高く、武器を与えるなどの手法でロシアが親露勢力を支援した、という事件のアウトラインを設定。そのうえで、軍事大国ロシアの「強引な介入」あるいは「暴走」というニュアンスまで交えた見解が大勢になってきました。欧米によるロシアへの制裁強化はその延長にあります。

 私が自宅で購読しているのは、外交や政治では割とニュートラルにみえる日本経済新聞ですが、それでもMH17の撃墜以降、「欧米による対ロシアの制裁強化」という方向をキープした報道が続いています。

 そんななかで出合ったのが、元共同通信記者の田中宇(さかい)さんのメルマガ「国際ニュース解説(無料版)」( http://tanakanews/ ) の7月28日号。ここで田中さんは、内外で公開されているネットニュース等を自在に引用し、「MH17を撃墜したのはウクライナ軍である可能性が高い」と、例によって西側の主要メディアの大勢に逆らう推論を示しています。

 かいつまんでいうと、ウクライナとロシアの対立をめぐる西側の国際世論では、欧米に近いウクライナを支持し、欧米に敵対するプーチン大統領率いる覇権主義的なロシアを非難するムードが支配的になっている。ウクライナはその機に乗じ、一段と自国への支持を集めるため(および、東部の親露勢力制圧への批判をかわすため)、政府軍の空対空ミサイルでMH17を撃ち落した、あるいはMH17そばをわざと空軍機が飛ぶことで親露勢力に地対空ミサイルでMH17を誤射させるように仕向けた、という推理です。一種の謀略論といえます。

 当然、これは推測に過ぎず、田中さんの「国際ニュース解説」は元々へそ曲がりですので、あえて少数意見を押し出したキライなきにしもあらず。国際調査団などによってことの真相が明らかにされ、またたく間に「ウクライナ空軍関与説」が全否定されることもありうる、と思われます。

 しかし、それでもなお、こうした(荒唐無稽な無理筋とは思いにくい)少数意見は貴重だ、と私は考えます。なぜかというと、どんなニュースであれ、その実相にフェアに向き合いたいのなら、大勢に水を差すことも辞さない「複眼的な見方」は必要不可欠だと思うからです。とくに私が知る範囲でいえば、日本のマスコミは海外の出来事、ことに独自取材の情報が少ない出来事に対する見方・アプローチはおおむね画一的になりがちです。

 同じ出来事・事象に対し、みなが揃って同じ意見を持つという、ありがちな傾向は相当に危なっかしい、と私は思いますし、ややみっともない一面もあります。そして、何よりも「フェアではない」と考えている次第です。
 

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