桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2014/07/20
労働保険の年度更新で



 知り合いに紹介された経営者からの依頼で、労働保険(雇用保険と労災保険)の「年度更新」手続きの準備を引き受けました。1人でも人を雇っている事業主は毎年6月1日〜7月10日の間、年間の労働保険料(概算)を労働局に申告して納付する義務があります。申告のベースになるのは、事業主が前年4月〜今年3月に支払った賃金の総額が分かる「賃金集計表」です。

 私は事業主から預かった賃金台帳に基づいて集計表を作成し、そこから数字を拾い上げて申告書に転記し、納付する労働保険料を計算しました。出てきた額は15万円ほど。昨年度の申告・納付額は7万円ほどで、倍以上になっています。

 そこで「昨年(度)はおととし(の年度)より賃金総額が大きく増えたのですか?」と聞くと、納付額の大きさに目を見張った彼は「そんなことはない。とりあえず、顧問の税理士先生にみてもらって保険料の節約策がないか、聞いてきます」と書類一式を私から取り上げました。こちらのメンツ、丸つぶれ。とはいえ、労働保険料が倍以上になったのに直面して、呆気にとられた経営者の気持ちも分からなくはありません。

 その後、私はベテラン社労士らに「経営状況に大きな変化はないのに、労働保険料が増えた。どんな要因が考えられるでしょうか?」と聞きました。答えは明快。「あんたが計算間違いしたか、去年の申告がウソだったかのどちらか。たぶん去年、賃金総額を過少申告するなり、雇用保険の人数をごまかすなりして保険料を抑えたんでしょう。もちろん、脱法の不正申告ですね。『プロのテクニックを駆使して保険料を節約します』と請け負わなかったあんたはマジメです」と、褒めているのか冷やかしているのか分からない応答でした。

 上記の経営者は、事情があって前任の顧問社労士との契約を解約し、あげくこちらに話が回ってきたという成り行きで、昨年度の申告は前任社労士が仕掛けたもの。これにつき、セコいとか、罰則モノだとか、批判はありえます。私が何より痛感したのは、保険料をきちんと真面目に納めている大多数の事業主に対し、一部の事業主(または社労士?)がやっているらしい過少申告なりのデタラメは「どんな弁明も通用せず、どこをとってもフェアではない」ということでした。

 いい勉強になりました。

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