京都や大阪の電車で車内広告を見ていると、こんなのに出合うことがあります。プレゼントが当たるお知らせで「○○をもらっちゃおう」とか「当たっちゃいました」、グルメ関係でなら「食べちゃった」――。当然これらは関東弁で、関西では単に「○○をもらおう」「当たりました」「食べた」となります。なのに、関西でこうした「ちゃった語」(と仮に名付けます)を時々見かけるのはなぜでしょうか。
しゃれてるから? まさか。テレビでタレントあたりがよく使っているから? そうかもしれない。関東風、東京風だから? ありえます。
当メルマガの送信先には東日本にお住まいの方が20人近くおられます。ただ、他の大多数は京都を中心とした西日本の方々。なので、遠慮なく続けますが、関西の語感では「ちゃった語」は「幼児語」だということです。むかしヒットした「山口さんちのツトム君」という歌の歌詞に「(ツトム君が)たちまち元気になっちゃって」というくだりがありました。幼児語としての「ちゃった語」の典型かもしれません。東ではともかく、西の公共広告での「ちゃった語」は、告知表現として「外して」いるように思います。
私は東には延べ7年ほどいたものの、生まれも育ちも西。「ちゃった語」は東にいたころ、どさくさで使ったかも知れませんが、今は気持ちが悪くて使えません。
次いでにいえば、個人的に今なおほとんど全く使えないのが、語尾につける「〜さ」です。「あのさ」とか「そいでさあ」とか「会社に行ったらさ」の「〜さ」(「学校さ行くべ」の「さ」とは少し違います)。西でも「〜さ」はよく聞きます。「アホな話やけどもさあ」とか。
覚えている限りで、私が「〜さ」を使ったのは1992年の夏のある日。当時、大阪・北浜の証券記者クラブにいて、関東出身の新人記者をトレーニングする立場でした。その彼が書いた記事をチェックしたところ、下手な原稿だったので、そばにいた彼に言いました。「あのさあ、○○君さあ」。口にした途端、背中全体に鳥肌(関西風にいえば「サブイボ」)が立ったような気分になり、軽いめまいを覚えました。以来、一度も使っていません。
「〜さ」を使えば、話にリズムがつくようです。言葉の継ぎ目などに「〜さ」を付けて延々と話す方もいます。しかし、私は「〜さ」が使えず、元々能弁ではないので、話自体がこま切れになりがち。「ちゃった語」はともかく、「〜さ」が使えないのは不便です。