16日夕刻に発信したメルマガ「桂川通信」第6号に載っけたコメントは以下のとおりです。
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熊本に住む80代後半の親せきから電話がありました。「新聞に『年金相談会で昔の年金記録が見つかり、年金が増えた』みたいな記事があったばってん、私にもそぎゃん記録が残っとったらよかばいね」。
というのも、第二次大戦の末期、親せきの女性は高等女学校を卒業した直後、「女子挺身隊」に入れられ、福岡県・小倉の陸軍造兵廠で2年近く住み込みの事務員として働いていたとのこと。「私ら『火の国乙女』いうハチマキば締めて、頑張っとっとたい。年金が増えるのなら、こぎゃん嬉しかことはなかよ」 というわけです。
ネットで調べると、女子挺身隊や学徒動員には一般に年金記録はないものの、軍需工場で他の職員並みの扱いを受け、賃金から掛け金が引かれていた場合、「旧令共済年金」の加算がつくケースもある由。そこで、小倉北年金事務所に問い合わせし、新旧の姓、生年月日を伝え、しばらく待つと返事が来ました。
「小倉陸軍造兵廠では旧令共済年金の適用があったようです。ただ、ご本人の年金記録では、厚生年金に入っておられたのは戦後の6カ月間。1年以上の厚年加入記録がないと、加算はつかないのです」。少し言いかえると、1年以上の記録があって初めて造兵廠の古びた年金記録を調べることになる、という手順のようでした。
日本年金機構のHPをみると、持ち主不明の年金記録はなお約2134万件(平成25年6月時点)。一方、公的年金の複雑きわまる仕組みを「繁盛を続ける温泉旅館」にたとえる方がいます。休みなく営業を続けながら「新館」「別館」「東館」「西館」などと建て増し、建て替えを続け、迷宮のようになった大型旅館と、戦前からの年金システムは似ている、という見立てです。
親せきは「6カ月」あった厚年加入時以外に通ったことのあるパートの勤め先に「消えた年金記録」がないか、引き続き私にお尋ねです。「それと、一緒に小倉造兵廠に行った幼なじみがおるとばい。あん人は私より会社勤めが長かったから、1年以上の厚生年金の記録があるかもしれんね」――。旧令共済年金の加算はたぶんそれほどに大きな額ではないとは思います。けれど、もし確認できれば、オマケというか臨時のボーナスのようなもの。私も張り切って確認作業を続行中です。
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