桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2013/12/18
「ブラック企業」調査



 今日のブログで触れた「企画記事『士業の値段』」の(下)が載っている日経新聞の17日夕刊には、厚生労働省による「ブラック企業調査」の本記が1面に出ていました。社会面アタマには本記の受け記事「過重労働まん延」、さらに中面に大きな企画記事「ブラック企業は避けたい」の都合3本の展開。流行語大賞の候補にもなった「ブラック企業」に対する、厚労省初の全国調査だといいます。他紙やテレビでも報道していたと思いますが、たまたま日経の紙面に目が向いたので、この3本をもとに以下、感想などを記しておきます。

 調査は、電話相談やハローワーク経由で把握した「過重労働に関して深刻で詳細な情報が寄せられた」企業・事業所5111カ所を対象に今年9月、立ち入り調査を実施したところ、82%(4189カ所)に「違法な時間外労働」「サービス残業」などの労働基準法違反がみられた、というもの。同省は違反があった企業・事業所に是正を勧告し、改善がみられない場合は所管の労基署が送検し、社名も公表する方針、となっています。

 社会面の受け記事は「パート労働者に月170時間の時間外労働、社員の約7割を係長以上の『名ばかり管理職』に」という書き出しの前文に続いて、過重労働の実態についていくつかの事例をリポート。中面の「ブラック企業は避けたい」は、就活を始める学生たちが、ブラックだとの世評のある企業は避け、ホワイトな企業を目指したい、という気運をまとめています。中面の記事が厚労省調査と同じ夕刊に載ったのは、発表の日程を承知したうえでの恐らくは「抱き合わせ」(でなければ、ただの偶然)。長時間労働に対する規制強化、労災上の過労死認定基準の緩和など、近年の厚生労働行政の動きを踏まえた展開だと思われます。労働相談窓口「posse」を主宰する方々らを中心にした「ブラック企業」批判に対する、厚労省なりの反応ではないか、とも言えそうです。

 もちろん、違法な時間外労働は急に広がってきたものではない、と考えた方がいいでしょう。実感として知る範囲でいえば、これらは高度成長期からずっと続いています(21世紀を迎えて以降、その動きが一段と強まっていることも確かです)。正当・妥当・適法の残業手当を支払っていない、支払う制度を持っていない、実は支払う気もない、などの労務管理システムの不備、または使用者側の意識の遅れや怠慢・開き直り(「オレらは若い頃、夜も寝ずに働いていたものだ」など)は今に始まったものではないからです。しかも、違法な過重労働に対する規制を「建て前」として受け入れる一方、一部の使用者には(そして労働者の一部にも)所詮は建て前に過ぎない、と見なす傾向があることもどうやら否定できません。

 中小企業経営者の相談相手になる社労士としては、的確な労働時間管理が従業員に、ひいては経営にとっても必ずやプラスになる、というスタンスで話をすることになります。そんなときは私も、かつての尋常とは言いがたい、それでいて喜々として過重労働に励んでいた折のことは脇におくべきかもしれません。厚生労働行政が規制を強めているという以上に、違法な過重労働はどう考えても健全ではない、ということをアピールするために。

 なお、日テレ系(読売テレビ系)で『ダンダリン 労働基準監督官』という連続ドラマが放映され、違法な過重労働などもテーマになっていた由。私は日ごろほとんどテレビを見ないので、始まったと聞いてはいたこの番組も、とうとう一度も見ることなく終わりました(さすがに例の『半沢直樹』はおしまい近くの2回ほどを見ています)。仕事に関係したテレビドラマなのに、一種の手抜かりではないか、と反省しています。悪徳社労士も出ていたというから、なおさら残念(笑い)。映画にでもなればいいのですが。
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