2026/03/16
映画5本
ネタ枯れに備えてアマゾンのプライム会員になりました。封切から少し時間
の経った映画が見放題、が触れ込み。会員登録後、ネットから「キネマ旬報ベ
ストテン(日本映画)」のリストを2020年度から5年分印刷し、各年度のベス
ト3以上の5本を選びました。封切時は知らず、ヒットしたかどうかも知らな
い、地味な映画ばかり。しかし、さすがに、いずれも手応え十分の佳作揃いで
した。 ■阪本順治監督 『せかいのおきく』(2023年度1位) 幕末手前の江戸にて貧乏長屋や武家屋敷から人糞を買い取って集め、近郊の
農家に運んで肥しとして売る「おわいや(下肥え買い)」の男2人と、2人のう
ちの弟分に惹かれる武家育ちの娘おきく(黒木華)を軸にしたオムニバス風の
連作9編から成っています。 阪本監督の軽快でほのぼのした脚本が面白く、おわいを集めたり、かぶった
り、ぶちまけたりするシーンは大半がモノクロ。おきゃんな「おきく」をアッ
プで映す場面などがカラーになります。「せかい」は貧乏長屋に住む「おきく」
の父親(佐藤浩市)が幕末の政情を予感して口にする言葉で、クソが出てくる
言葉を連発して笑い合う「おわいや」の2人の様子と微妙にシンクロして味が
あります。 ■三宅唄監督 『夜明けのすべて』(2024年度1位) 教育機材等の卸売会社で働く「パニック障害の男」(松村北斗)と「PМC
(月経前症候群)の女」(上白石萌音)の交錯を描いたヒューマンな現代劇で
す。職場の同僚から恋人に、といった進展はなく、障害を持った者の色恋抜き
の同志めいた交感が見えてきます。展開は淡々としており、派手さも暴力もな
く、ストーリーは穏やかに進みます。 聴覚障害の女性ボクサーを描いた、同じ監督の『ケイコ 目を澄ませて』(
2022年度キネ旬1位)と気配が似ています。監督は2025年度のキネ旬1位
の「旅と日々」でもメガホンを取っており、こちらもいずれアマゾン・プライ
ムで観ることができそうです。 ■ヴィム・ベンダース監督 『PERFECT DAYS』(2023年度2位) 東京の公衆トイレの清掃に励む、無口な中年男(役所広司)の生活を描く、
こちらも淡々とした流れの佳作。ドイツの世界的な映画監督が縁あって制作の
指揮を取ったということで、シブい仕上がりです。 独り暮らしのアパートで朝早く起き出し、軽バンで公衆トイレのある公園に
向かい、内部を丁寧に清掃して次のトイレに移動。仕事を終えた後、銭湯に向
かい、飲み屋で一杯を楽しみ、アパートに戻って文庫本を読みながら寝る。そ
んな場面が繰り返されます。 後半にいたって中年男を「おじさん」と呼ぶ女の子がやってきてストーリー
に変化がみえます。この辺り、ネット上の映画評をみていると、親子ではない
か、父親は傷害事件を起こした服役帰りのようだ、などと深読みする声があり、
なるほどと思わされました。評価の割れる映画のようですが、私は印象に残る
いい作品だと考えます。 ■石井裕也監督 『茜色に焼かれる』(2021年度2位) 一人息子と暮らすシングルマザー(尾野真千子)をめぐる、理不尽で打開不
能な逆境の生活を描いていきます。周囲の、とくに男どもの責任逃れ、無理解、
身勝手さを執拗に描き、やりきれないストーリーともいえます。 バンドリーダーの夫を歩行中の交通事故でなくし、加害者からの謝罪がない
ことを理由に賠償金を受け取らず、父親の借金等を肩代わり返済し、やってい
けないので花売り場のパートと風俗のバイトで生活費を稼ぎ、再婚を意識した
元同級生に裏切られ、息子が学校でいじめにあっても教師は「被害は確認でき
ない」と逃げ、というふうな貧窮と悲運と挫折の連鎖を描いていきます。踏ん
だり蹴ったりのストーリーながら、最後に出てくる夕焼けのシーンが秀逸です。 ■高橋伴明監督 『夜明けまでバス停で』(2022年度3位) コロナ禍の初期、2020年の東京・渋谷で起きた「ホームレス殺人事件」を
モデルにしたという一作。コロナの流行が拡大し、居酒屋で働くパート女性ら
が店の休業で失職します。そのうちの1人(北林三知子)は従業員寮から追い
出され、人に弱みを見せられない性格もあり、ホームレスになって街をさまよ
います。 モデルの事件では、バス停のベンチで眠る女性ホームレスを近所に住む無職
男が殴り殺しますが、映画では襲われる直前に救われます。さらに、柄本明演
じる老ホームレスの誘導で「腹腹時計」(爆弾作りの私製教則本)をもとに時
限爆弾を作って「ウソだらけの世の中」に仕掛ける、という展開とその結末も
面白く、わずかな明るさが兆してくるようです。




























