2026/11/04
村上龍
作家の村上龍さんが10月17日、どこかにあるらしい自宅(箱根? 横浜?)
にて死亡しました。死因も公表されていませんが、脳梗塞との説が流れている
ようです。74歳。少し早かった。私は龍さんの作品群の3分の2は読んでいて、
枯れることのない龍さんの70代、80代の書き物を読みたかったと残念に思っ
ています。 1976年に芥川賞を受賞した中編小説『限りなく透明に近いブルー』でデビュ
ーし、100万部のベストセラーになってたちまち人気作家に。ただ私は、米軍
基地のある街での若い面々の退廃と猥雑と混沌の生態を描く、サブカルチャー
めいた『限りなく』には当時、馴染めなかったように思い出します。 やんちゃで、行動的・攻撃的で、ワイルドで、お祭り大好きな才気煥発のに
ぎやかな作家という印象。「不良または非行」青少年を肯定し、推奨する気配も
ありました。「昭和の同時代の空気」に遅れて触れていった私は、控えめかつ温
厚かつ生真面目で、品行方正な生徒・学生でしたし(ほんとか?)、少なくとも
当時の派手な村上さんは共感しにくい苦手なタイプでした。「カッコつけるな!
」という反発があったというべきか。 『限りなく』の3年後、『風の歌を聴け』で登場した村上春樹さんを内省的な
「柔」とすれば、龍さんは外向的な「剛」に区分けできそうにも思います。読
んだうちの龍さんで最も面白かったのは『五分後の世界』(1994年)。1945年
8月、日本は連合国に降伏せず、多数が文字通り「地下」に潜り、徹底抗戦し
ているダークファンタジーです。 他にも90年代から2000年にかけての、白人男の無動機殺人を描いた『イン
ザ・ミソスープ』(1997年)、引きこもり少年の独白が続く『共生虫』(20
00年)なども読後感は鮮烈でした。中学生が北海道に独立エリアを作る『希
望の国のエクソダス』(2000年)はともかく、北朝鮮の兵士が九州・福岡に
襲来する『半島を出よ』(2005年)も、開発された不老不死の遺伝子をめぐ
る『歌うクジラ』(2010年)も、ともに近未来のSFとして興味深く読めま
した。 退廃した若い面々に共感する作風から、昭和から平成にかけての社会の変
質の兆しをキャッチし、自由奔放な想像力と強靭な筆力で同時進行的にそれ
らを表現する作風への移行は鮮やかでした。龍さんの公表された最後の長編
は『ユーチューバー』(2023年)。探して読んでみたく思います。




























