暑くも寒くもなく、紅葉は今が盛りです。低山歩きにふさわしい時節。しか
し、山里のどこにも出掛けてはいません。クマが怖いからです。

　奈良・天理の東側山麓で、京都・宇治の天ケ瀬ダムの向こう岸で、さらに観
光客ひしめく嵐山でも、クマの目撃情報が相次いでいます。どんな低山であれ、
ひとりで山中に入り、展望ベンチで休んでいると後ろからクマが、紅葉の谷を
見下ろしていると横からクマが、山道を下っていると前からクマが現れる可能
性があります。ザックに付けたクマ鈴は、人間の都合のいい接近を教えるもの。
クマ撃退スプレーなど、いざという時に使える人はどれほどいることか。横に
なって死んだふりをしたとしても、真上からクマが鼻息臭く近づいてきたら恐
怖でガバっと逃げようとしてそのまま食われるのではないかーー。

　といった次第で、やむなく下界にて逼塞しつつ、それでも娯楽と息抜きを兼
ねて中古ＣＤ探しで動いています。話を急に変えて恐縮ですが、タイトルの「
オアシス」とは1991年に結成され、2009年に解散した英国のロックバンド。Ｃ
Ｄを探しているのは、仲の悪さで有名なソングライターのノエルと、ボーカル
のリアムのギャラガー兄弟が仲直りし、昨年バンドとしての活動を再開して世
界ツアーに出掛けた、というニュースをみたからです。

　2009年の解散までに出たアルバムは、ライブ録音を除くと10枚。このうち５
枚までを手に入れ、頻々と聞いています。ビートルズを尊敬しているというこ
とで、オアシスの曲は明快で勢いがあって、初めて聞いても十分に楽しめます。

　私らの世代はローリングストーンズやレッドツェッペリン、ディープパープ
ル、Ｔレックスあたりまでは、主にラジオを介してほぼ同時進行的に新曲をフ
ォローしてきました。ところが1980年代に入ると、洋楽を聞く習慣は次第に途
絶えていきます。社会に入り、仕事が忙しくなり、面白くなり、たまにテレビ
経由で歌謡曲を耳にする以外、新しい洋楽を追い掛けるという余裕も興味も失
せたからです。なのでボンジョビ、Ｕ２、ヴァンヘイレン等はほとんど知らず、
クイーンは好みに合わず、結局ピンクフロイドまでのＣＤを繰り返し聞くだけ、
という塩梅。そんな身ながら、偶然にもオアシスのＣＤを聞き始めて良かった、
冥土へのいい土産になる、と考えています。