作成日:2025/05/17
ヘルパーさんの話
訪問介護サービスの事業主から聞いた話です。 要介護状態にある高齢者の身体介護、生活支援介護に励むヘルパー(女性)
がいます。親身になっておばあさんらをお世話し、利用者宅からの評判も良
い、ということでした。そんななか、定期的に通っている利用者宅の1軒か
ら、ヘルパーを雇用している事業主あてに連絡が入ります。 「ばあさんが『封筒に入れて仏間に置いていたお金がない』と言っている」。
おばあさんの家族、つまり中年の世帯主(息子)からの訴えです。「疑うわけ
ではないが、いつも世話になっているヘルパーさんにウチまで来てもらえま
いか」 電話を受けた事業主とヘルパーが利用者宅に駆け付け、世帯主から話を聞
き、訪問介護の最中、ヘルパーがその封筒を持ち去った可能性もゼロではな
い、と疑っていることが分かります。ヘルパーは「封筒なんか知りません」
と反論し、悔しさから泣き出したということです。 やがてヘルパーを挟んで、事業主と世帯主の口論になり、冷静さを失った
世帯主は「警察で指紋を取ってもらおう」と言い出します。その日のうちに
3人で近くの警察署に向かい、地元では名士とされる世帯主の強硬な訴えで、
やむなくヘルパーは指紋採取を承諾します。 ところが、現金入りの封筒はその日のうちに利用者宅の別の場所から見つ
かり、ヘルパーは濡れ衣を被ったことがはっきりします。世帯主は改めて事
業主に電話してきました。「ばあさんもボケたようだ。ヘルパーさんを疑って
悪かった。申し訳ない。水に流して、また明日から介護に来てくださらんか」
と明るい口調で依頼したとのことです。 事業主は応えました。「水には流せません。お宅はウチのヘルパーを侮辱し
ました。当社とお宅との信頼関係は消滅しました。介護の契約は解除させて
いただきます」。穏やかに、間髪を入れず、左記を口にした、ということです。