作成日:2025/11/17
カスハラと就業規則
各種の「ハラスメント(嫌がらせ・いじめ)」は、職場や学校などの環境・
居心地を悪くします。昔は許容・黙認される一面もあった(現場ではほとんど
嫌悪されていた)セクハラやパワハラも、被害者を守るという意味合いから、
規制や行政上の指導が厳しくなっています。 2022年4月から中小企業にも適用されるようになったのが、パワハラ防止法
(改正労働施策総合推進法)。職場でのパワハラについては、(1)優越的な
関係を後ろ盾にし、(2)業務上必要かつ妥当な範囲を超え、(3)労働者の
働く環境を悪くする、という3点いずれをも満たした加害者の言動をその定義と
します。 そのうえで、セクハラやマタハラも含め、以下を就業規則に盛り込むことを
義務付けました。(1)ハラスメント禁止の方針を明確にし、社内で周知する、
(2)社内での相談窓口を定め、窓口は被害を受けた労働者の相談や状況に応
じ、適切に対応する、(3)事実関係を確認し、被害者への配慮、加害者に対
する措置、再発防止策の策定に向かう、(4)被害者・加害者のプライバシー
保護と相談などを理由とした不利益な取り扱いの禁止――の4点です。 長い前置きになりました。今年6月の改正パワハラ防止法でハラスメントに
加わったのが、カスタマーハラスメント(カスハラ)と就活ハラスメント。こ
れも来年末までの改正法の施行に合わせ、労働現場では、就業規則等における
関連条文の改定・挿入が求められることになります。 とはいえ、カスハラと就活ハラを含めた就業規則の条文例などはネットで検
索してもまだ現れていないようです。特にカスハラは従業員と顧客、取引先な
ど対外的な関係において、社内の労働者が「嫌がらせ・いじめ」を受ける、と
いう事態にあたり、社内でのパワハラやセクハラとは趣きが異なります。実は
最近ある関与先から相談を受けたので、ない知恵を絞ってカスハラ対策の就業
規則改定条文を試作してみました。 「第○条(カスタマーハラスメントへの対応) 会社の顧客、取引先、施設
利用者等の利害関係者による、社会通念上許容される範囲を超えた言動によって
労働者の就業環境が害される、いわゆるカスタマーハラスメント(以下「カス
ハラ」という)が発生したとき、あるいは発生を予防するため、会社は以下の
措置をとる。 (1)カスハラとみなされる社外の利害関係者の言動が、合理的で正当な要
求か、あるいは許容範囲を超えた不合理な要求(カスハラ)かの区分けは難し
いため、会社は労働者に対し、カスハラであるか否かを判断し、現場で適切な
対応ができるようにするための啓発・研修等をおこなう。 (2)会社はカスハラと思われる事案が発生したとき、労働施策総合推進法
等が示す目安に基づき、当該事案がカスハラであるか否かを判断するための
社内マニュアルをまとめることとし、それに沿って法的措置を含む各種の対
応を取ることができるものとする。 (3)会社はすでにパワハラ等に対応した相談窓口を社内に設けており、労
働者はこの相談窓口に対し、カスハラに関する相談・訴えをおこなうことがで
きる。 (4)会社は、労働者がカスハラに関わる訴えを社内の相談窓口に持ち込ん
だことに対し、その労働者を不利益に扱ってはならない。」 条文としては試作段階ですが、いずれ推敲した「カスハラ条文」の追加を関
与先の事業主等に提案し、それぞれ無償で就業規則を改定していければ、と考
えています。そんなご時勢のようですから。















