桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2025/07/18
桂春団治



 初代・桂春団治(1878〜1934年)の落語CD全集10巻のうち1〜5巻を古
本屋の中古DVDコーナーで見つけ、安価だったので買い込みました。  春団治は明治末期、上方落語界に登場し、昭和初期まで活躍した、当時の通
称「爆笑王」。デュエット演歌「浪花恋しぐれ」で本人役が「芸のためなら女房
も泣かす それがどうした文句があるか」と歌っています。戦後の上方落語の
復興期以降、同じように「爆笑王」と呼ばれた桂枝雀(1999年うつ病で自死)
が、戦前の大先輩のダイナミックでスピード感のある芸風に憧れていたと伝わ
るなど、春団治は伝説の落語家ともいえます。  CDは大正期以降に録音されたSPレコードをデジタル復元して、伝説をよ
みがえらせようとしたもの。実際、早口のだみ声で、あざといギャグを機関銃
のように連発している録音は、生きが良くて大阪風で面白い。ただし「阿弥陀
池」「いかけ屋」「チリトテチン」「厄払い」など、5巻が収めていたのは当時
の新旧作19本で、それぞれが測ったように15分ほどで終わります。片面3〜8
分しか録音できなかったという当時のSPレコードの容量の制約が絡むようで、
スタジオでの落語は息せき切って慌ただしい気配です。間をとる、というゆと
りが窺えません。  つまり、春団治は観客がおらず、独りマイクに向かって覚えているままの落
語を、時間を気にしながら口述しているようにも聞こえます。マクラはなく、
すぐ本題に入り、観客を前に笑いの反応を見ながらアドリブを放ったりもしな
い、という一本調子が続きます。そんな行儀のいい春団治も大正から昭和にか
けての道頓堀界隈の寄席では、もっと破天荒で気まぐれかつ無茶苦茶な落語を
演じていたのではないか、とも思えてきます。  人間国宝だった桂米朝が40代のころの高座を収めたカセットテープ全集を
30本ほど持っていて、むかしよく車のカセットデッキで楽しんでいました。テ
ンポに緩急があって聞き取りやすく、筋を明快にまとめるクリアな話しぶりが
見事で、世評どおり、米朝さんの落語は、戦後の上方落語の真骨頂であり、金
字塔であり、空前の名人芸だったように思います。何より観客席との一体感が
素晴らしい。

 初代・春団治の落語も当時の高座のままで再現されたなら、と夢想する一方、
プレーヤー自体を既に持たず宝の持ち腐れになっている米朝さんのカセット全
集を簡単にCDにデジタル録音する手はないものか、と思いわずらっています。
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