桂川通信コメント
桂川通信コメント
作成日:2025/07/02
『国宝』など映画5本



 6月に封切され、ヒット中だという吉田修一さんの同名の長編小説をベース
にした邦画『国宝』(李相日監督)をシネコンで観てきました。「100年に一度
の傑作」などという客寄せPRめいた映画評はおおげさ。とはいえ、戦後の上
方歌舞伎界を舞台にした起伏に富む物語で、面白く観賞できました。  李監督が吉田さんの長編を映画化するのは『悪人』『怒り』に続いて3本目。
私はいずれも原作を読み、映画も観ています。ただ『国宝』は未読。映画の脚
本は原作を圧縮しているようですが、映画には映画ならではの魅力はありそう
です。とくに上方歌舞伎の大御所(渡辺謙)の御曹司(横浜流星=本名だそう
です)と、長崎の侠客(永瀬正敏)の子で大御所に拾われる、後の歌舞伎女形
の人間国宝(吉沢亮)の演技がうまく、感心しました。  『悪人』も『怒り』も、さらには『パレード』あたりも含め、吉田さんの長
編は、人間に潜む、分かりづらい「悪」を分からないままに放り出して描いた
観があり、それが魅力でしたが、『国宝』は『悪人』『怒り』より呑み込みやす
く思えました。  また、主要な配役の過半は関東系で、大阪ことばを懸命に諳んじようとして
いましたが(渡辺謙や寺島しのぶは割とうまかった)、その微妙なイントネー
ションの無理が気にならないほどの、女形になりきった踊りと語りと演技だっ
たようです。  さて『国宝』だけでなく、以下に合間を縫ってレンタルDVDで観た4本に
ついても備忘録風にまとめておきます。 ■中江和仁監督 『きのう何食べた?』  東京に暮らすゲイのカップル(西島秀俊、内野聖陽)を中心にした今風のト
レンディドラマというのでしょうか。2021年11月の公開で、グルメを楽しむ
場面が多かったという原作漫画やテレビ連続ドラマを踏まえたらしい劇場版。
退屈はしないままながら、一方で何が面白いのかよく分からず。5点満点でい
えば2点あたり。 ■西谷弘監督 『沈黙のパレード』  原作は今をときめくミステリー作家・東野圭吾さんの同名の長編。福山雅
治演じる研究者湯川学のガリレオシリーズの映画化3作目。2022年9月公開。
ガリレオの湯川は天才物理学者という役柄で、1作目、2作目と同様(ある
いはガリレオ以外の近年の原作や映画化でも)、トリックはいかにも工学部的
または機械的で、そのトリックやアイデアに収れんさせていくようにストー
リーを後付けているため、随所に無理があるように思えます。5点満点で3点。 ■飯塚健監督 『ある閉ざされた雪の山荘で』  こちらも東野圭吾さんの同名の原作ミステリーを改編した映画化。2024年
1月の公開。私は1992年に公刊された原作を当時読んで楽しんだ覚えがあり
ますが、率直にいってこの映画化はひどい、と思わされました。ネット上の映
画評でも悪評フンプン。三重四重になった入れ子細工のような構成という触れ
込みながら、無理があり過ぎて、しかも何がどうなっているのかの描写や説明
が不十分。描写や説明があったようだとしても矛盾と強引さが目立ちます。5
点満点で1点。 ■五藤利弘監督 『日光物語』  2023年6月の公開。栃木・日光に実在する古民家カフェを舞台にした、こ
れもよく分からない一本でした。主役はスネオヘアーとかいう男性ミュージシ
ャン、相方になるのが元AKB48の武藤十夢とかいう女性タレント。この両
名のことを知らない側からすれば、メリハリに乏しいストーリー、せっかくの
日光なのに冴えない自然描写、ご隠居風に登場した故宝田明も加わった、申し
合わせたようなダイコン演技と相まって、退屈しました。山田洋次監督『男は
つらいよ』の「フーテンの寅さん」を思わせる、などという、冗談のような映
画評も見受けましたが、こちらも1点どまりです。
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