作成日:2024/11/17
映画4本
ケガが治り、山歩き再開のメドが立ったので、もみじ探訪を狙って関西エリア
での頃合いの山をリサーチ。ところが、11月中旬になっても紅葉の盛りには至ら
ず、16日まで出かけられないまま。やむなく合間、つなぎ風に邦画をレンタルD
VDで観ました。偶然ながら2023年公開の暗めの問題作が多くなったようです。
ご寛恕願います。 ■松本優作監督 『Winny』 2023年3月の公開。ファイル変換ソフト「Winny」を開発した天才プロ
グラマー金子勇さん(故人)が2004年、京都府警に著作権侵害ほう助容疑で逮
捕され、1審で有罪(罰金刑)になるまでを描いたノンフィクションタッチの法
廷モノです。2、3審で逆転無罪となりながら、金子さんは最高裁判決の半年後、
急性心筋梗塞で死去。エンディングでは本人の語りを収めた録画も流れ、興味深く
観賞できました。 Winnyは使う人も減り、功罪については今も賛否があります。私は2チャ
ンネル経由などで手に入り、著作権無視の違法・無法状態を招いたとされるこの
ソフトについては門外漢なのでコメントできません。むしろ金子さんの摘発と法
廷での論争の経過が(被告弁護団の主張ながら)ほぼ呑み込めた一方、金子さん
役を演じた東出昌大の演技は雰囲気があって感心した、といった程度の感想にと
どまります。 ■森達也監督 『福田村事件』 関東大震災が起きた1923年9月1日の5日後、千葉県北部の福田村で起きた
殺人事件を描いたノンフィクションタッチの問題作です。大震災直後、混乱する
関東一円では主に朝鮮人に関わる流言飛語(暴動を起こす、井戸に毒を入れた、
など)が飛び交い、警察や自警団による多数の朝鮮人殺害事件が発生しました。 福田村での事件は「不逞鮮人」らの不確かかつ不穏な噂で殺気立った村民ら自
警団が、たまたま通りかかった香川県からの売薬行商団15人との行き違いから、
親方ら9人(うち幼児3人)を日本刀や竹槍、とび口などで殺したというもの。
自警団は「行商団を朝鮮人と思い込み、逆上し、追い回して襲った」として検挙
されたものの、事件は地元でも長く公にはされなかったようです。私は事件のこ
とは以前から耳にしてはいましたが、映画化は初めてとのこと。大震災100年後
の2023年9月1日の公開。おぞましく、醜悪・残忍で、つくづく後味の悪い映
画でした。 ■塚本晋也監督 『ほかげ』 2023年11月の公開。監督自らがフィリピンでの敗残兵を演じた凄絶な戦場映
画『野火』(大岡昇平原作)等に続き、空襲で壊滅した、関東とおぼしき都市の
焼け跡を舞台にした戦争モノ。夫と子を失った居酒屋の若い女将、両親を失くし
た孤児、引き揚げた陸軍兵士らが織りなす、どこまでも黒々とした、しかし淡々
とした展開が続きます。 映画での敗戦直後の描かれ方には諸相あります。この映画は登場人物みなが虚
無的で絶望しており、さらに飢餓線上のただなかにあり、空襲と戦争の記憶から
逃れられず、ほぼ全部が寝入っている時に激しくうなされます。優れた作品だと
は思うものの、好んで2回観ようという気にはなりにくい、といえます。 ■深川栄洋監督 『法廷遊戯』 2023年11月の公開。架空の法都大学法科大学院(ロースクール)で司法試験
を目指す同期の男女3人を軸にしたミステリー映画です。原作は現役の弁護士
五十嵐律人さんの同名の長編推理小説(未読)。院生らが一種の模擬裁判の延長
で、10代だった3人が関わった事件の真相を解いていくなか、本物の法廷審理の
おしまい部分ではナゾ解明が二転三転します。 私はミステリー好きながら、配役や会話や展開が「今風」で正直、流れを呑み
込むのがやっと。3人が偶然同じロースクールの同期生になったというのは無理
があるし、構内に洞窟めいた空き地がある大学など、考えにくいといった塩梅。
ただ、精緻なロジック全面展開だという原作は読んでみたい気にはなりました。