作成日:2024/10/02
登山アプリ
今回いただいた叱責で最もこたえたのが、ワンゲルの同期で、当時、部長も
務めた関東在住の友人のメール。「登山アプリは使ってないのか? 俺もよく
単独行で山に入るけど、道がヘンだと思ったら、GPS機能付きの登山アプリ
をスマホで見て、すぐに現在地を確認するぜ」うんぬん。
9月9日、焼石岳に入った私は下山後、翌日の予定だった岩手県南東部の五
葉山に向かうため、釜石のビジネスホテルを予約しており、そこでスマホに無
料版登山アプリをダウンロードするつもりでした。それまでも機会はありまし
たが、操作が難しそうだし、面倒だなあと後回し。この怠慢がアダになった一
方、今は詳細な山の地図があるので様子はある程度は分かる。これに加えて「
なんせオレ、山歩き歴50年だからな。夏山だし」という慢心と油断があったこ
とは間違いありません。
実際、数種類ある登山アプリのうち、昨日、登録者最多のYAМAPをダウ
ンロードしてみると、呆気ないほど簡単に登録できました。ホゾを噛むとはこ
のことです。焼石岳での3日間を思うと、くどいようですが、登山アプリを使
わなかったことに激しく後悔して気分が悪くなりました。「お前はアホか。う
ぬぼれるな」
一方、叱責の中に混ざっていたのが、「(ブログの体験記には)どこか自慢し
ている気配がありますね」というもの。道を誤っても「そのうち何とかなる」
とタカをくくり、ずるずると悪い方向に迷い込んでいったのは確かながら、そ
の過程を他人事のように感じている一面はありました。
他人事といえば、山中2日目の午後しきりに見た「幻覚」がそうです。登山
道の前方にヒトがいる、と思って近づくと岩だったり、木だったり。緑の横縞
のTシャツを着たヒトが座っていると見えたのが、道端のシダだったり。見下
ろせる谷底に白いワイシャツの男数人がこちらを見上げている、と思って近づ
いても何もなかったとか。ダケカンバの枝がモビールのように空中に張り出し、
それが徐々に動いていく場面などは珍しく、思わず見惚れました。
最初は不思議に思い、すぐに「相当疲れている。あれは目の錯覚、マボロシ」
と分かり、やがて次はどんな幻覚が、と楽しみになってきたほどです。そんな
根拠のない余裕というか、冷めて観察しているような、ミエを張っているような
報告が自慢気にみえたのかもしれません。
ともあれーー。避難小屋そばで私の両脚に応急の手当をほどこし、さらに状況
をみて110番通報もしてくださった命の恩人ともいうべき男性は、私の退院報
告メールに「回復されたら、また山を楽しんでください」と返信くださいました。
断然嬉しく思いました。